病気にならない「予防栄養学」講座

第11回 男性の健康と栄養

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POINT1 日本の男性の平均寿命が下がっている!?

POINT2 煙草を吸う方のための病気予防指南

POINT3 お酒を飲む方のための病気予防指南

 

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働き盛り世代を突然襲う病気の怖さはわかっているけれど、ついつい忙しさのあまり「自分だけは大丈夫」と過信していませんか?
長寿国日本ですが、2011年の平均寿命は男性79.44歳(国際比較では第8位)で、2009年に比べると少し下がっています。東日本大震災の影響もありますが、死亡原因は、男性20~44歳では自殺がトップ、45歳以降の第1位は悪性新生物(がん)、第2位心疾患、第3位脳血管疾患となっています。
ストレスの多い世の中だけに、鬱に陥らない対策も必要で、また、イライラして習慣性の喫煙となったり、仕事帰りの一杯や晩酌も度を超すと害になることも考えねばなりません。

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心疾患、脳血管疾患の危険因子となるのは、糖尿病、高血圧症、脂質異常症などいわゆる生活習慣病(メタボ)です。近年、認識も深まり多少減少傾向が見られるようになりましたが、今回、国民の健康を増進するための健康日本21(第2次・平成25~34年)では、死亡原因として急速な増加が予想されるCOPDへの対策なども重要課題として挙げ、予防と改善に向けての具体的な目標が定められました。

 

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男性 女性 男性 女性
全がん 2 1.6 喉頭がん 5.5
口唇・口腔・咽頭がん 2.7 2 食道がん 3.4 1.9
肺がん 4.8 3.9 胃がん 1.5 1.2
肝臓がん 1.8 1.7 膵臓がん 1.6 1.8
子宮頸がん 2.3 尿路がん 5.4 1.9
腎がん 1.6 0.6

出典「独立行政法人国立がん研究センターがん対策情報センター」

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COPD(慢性閉塞性肺疾患)とは、長期の喫煙などによってもたらされる肺の炎症性疾患で、かつて肺気腫、慢性気管支炎と呼ばれた疾患も含まれています。
肺は呼吸によって取り入れた酸素を臓器に与え、不要な二酸化炭素を外に出す働きをしています。鼻や口から吸う空気は1日1万リットルで、気管、気管支、さらに細い細気管支を経てブドウの房のように連なった肺胞(大人ではその数3億個)に至り、再び逆のルートを経て呼気として身体の外に出します。この空気の出し入れが炎症によってできにくくなったり、肺胞が壊れて酸素と二酸化炭素の交換ができなくなる病気がCOPDです。
主な症状としては、咳、痰が頻繁に出たり、息切れを感じたり、酷い場合はヒューヒュー、ゼイゼイなど喘鳴が出る場合もあります。
また、女性は男性よりタバコ煙に対する感受性が強く、同じ本数と年数でタバコを吸うと、男性より女性の方が重いCOPDになるそうです。

 

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タバコは依存症を増す物質ニコチンのほか、多くの有害物質を含むため喫煙は癌などの危険因子となります。また、タバコは吸う人だけでなく、吸わない周りの人も健康障害を受けます。

1.タバコを吸う人が受ける健康障害

タバコを吸うと、肺がんをはじめ、口腔がん、咽頭がん、食堂がん、胃がん、膀胱がんなど多くのがんに罹りやすいことが明らかになっています。さらに、がん以外にも、心臓病、慢性気管支炎、肺気腫、胃・十二指腸潰瘍などにも深い関係があります。

2.タバコを吸わない人が受ける健康障害

タバコの煙は、喫煙者が直接吸い込む(主流煙)とタバコから立ち昇る煙(副流煙)に分けられます。喫煙者の周囲にいるだけで吸うことになる副流煙は、主流煙と比べてニコチンは3倍、一酸化炭素は5倍、アンモニアは50倍、発がん物質は3~20倍ともいわれています。この副流煙を吸いこむ(受動喫煙)により、発がんリスクが高まり、メタボリックシンドロームを悪化させることも知られています。ニコチンは神経を興奮させ、腸や血管を収縮させて血圧を上昇させるのです。

 

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肺の発育が未熟な乳幼児は副流煙による障害が起こりやすいのです。気管支は胎児の早い時期に作られ完成しますが、肺胞の完成は乳幼児期に90%、その後思春期までゆるやかに発育します。

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喫煙者はタバコを1本吸うだけで、ビタミンCを約25mg、成人男性が1日に必要量(推奨量)100mgの1/4を消費しているのです。ビタミンCを多く含む食品(菜の花、パプリカ、ブロッコリー、柿、オレンジ、グレープフルーツ、キウイ、イチゴ、ミカンなど)を摂りましょう。

 

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  1. 禁煙しましょう。
  2. ウォーキングなど無理のない範囲で運動しましょう。歩くときに鼻からたっぷりの空気を吸って、口をすぼめてゆっくり長く息を吐く呼吸をするのも効果的です。
  3. 肥満傾向のある人は適正体重となるよう食事に気をつけましょう。やせ気味の人は呼吸するだけでも体力を消耗します。充分な栄養を摂取して、体力を落とさないようにしましょう。
  4. 痰が絡まないよう水分を多めに飲むようにしましょう。

 

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アルコールは嗜好品のお酒として生活の中で根付いてきました。精神的ストレスを過剰に受けている場合は、アドレナリンの分泌により血糖値が上がり、空腹を感じないときもあります。そんなときにアルコールを摂取すると食欲がわいてきます。それは、肝臓がアルコールを毒物とみなし、優先的に分解をはじめ、糖新生がブロックされ、血糖値が下がるからです。適量のお酒は食欲増進につながり栄養補給もでき、疲労回復にも役立ちます。一方、アルコール依存症やがん、肝機能障害など心身の疾患を引き起こすことも知られています。

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●ビタミンB1・・・アルコールに含まれる糖質を分解してエネルギーに変える時に補酵素として働きます。ビタミンB1が不足すると、糖分をエネルギーに変えることができなくなり、血液中に乳酸やプルビン酸などの疲労物質が溜まり、疲れやすくなります。
多く含む食品(豚ヒレ肉、鰻のかば焼き、豚もも肉、豚ロース肉、ボンレスハム、大豆、玄米ご飯など)を摂りましょう。

●ナイアシン・・・糖質を分解してエネルギーに変える時の補酵素として働きます。また、アルコールの分解過程でできるアセトアルデヒドを分解する補酵素として活躍します。多く含む食品(タラコ、カツオ節、ムロアジ、まぐろ、豚・牛レバー、豚ロース肉、落花生など)を摂りましょう。

●ビタミンB6・・・脂質の代謝を助け、肝臓に脂肪が蓄積するのを防ぎます。脂肪肝を防ぐため、多く含む食品(カツオ、マグロ、サケ、サンマ、サバ、牛レバー、鶏ささみ、鶏レバー、バナナ、さつま芋など)を摂りましょう。

 

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アルコールは糖質、脂質、たんぱく質と同じように、代謝過程において1g当たり7kcalのエネルギーを発生します。アルコールは消化の必要がなく、すぐに胃から20%、小腸から80%吸収され、肝臓に運ばれます。肝臓では酵素の働きでアセトアルデヒドを経て酢酸に分解され、全身に運ばれて各組織で分解され、二酸化炭素と水(尿や汗)になって排出されます。

 

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高尿酸血症

腎臓から尿とともに排泄される尿酸が、血液中に増えすぎた状態となる疾患です。尿酸は細胞の遺伝子内に含まれる成分・プリン体が分解されてできる老廃物ですが、食事に含まれるプリン体の摂り過ぎで排泄が悪くなった場合に起こります。過剰な尿酸は尿酸塩となって関節や腎臓に溜まり、関節の激痛・痛風発作があらわれます。アルコール飲料に含まれるプリン体は多くありませんが、アルコールの代謝が尿酸値を上昇させます。特にビールはプリン体を多く含むので飲み過ぎには注意が必要です。
アルコールを控え、プリン体を多く含む食品(鶏レバー、カツオ、牛レバー、マグロ、タコ、エビ、カニ、アサリなど)を摂り過ぎないよう注意して、水分を補給して、尿酸を尿と一緒に排出しましょう。

二日酔い

アルコールの代謝は肝臓が担っており、肝臓の処理能力を超えると、翌日になっても頭痛や吐き気、めまい、食欲不振などが残ることをいいます。肝臓の処理能力は日本酒1合で約3時間です(体調により差があります。また、体質によるアルコール分解酵素の多少も影響します)。

 

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お酒によってアルコール度数が異なりますが、実際に飲んだ純アルコール量は、
飲んだ量×アルコール度数(%)×比重(0,8)で計算できます。日本酒(アルコール15度)1合のアルコール量は20gで、ビール(アルコール5度)中瓶1本、ワイン1/4本、焼酎0,6合と同じです。アルコールの肝臓での処理能力は、体重60~70gの人で、1時間に7~9gですから、日本酒1合で約3時間かかります。

 

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空腹時はアルコールの吸収速度が速くなるので、料理を一緒に摂るようにします。
ときどき水を飲むことも大切です。

●アルコールの分解を促進する食品(胡麻、トマト)を摂りましょう。
●肝機能を高める食品(牡蠣、イカ、ホタテなどタウリンを多く含む食品。枝豆や大豆製品は、肝臓に入ったアルコールが脂肪となって溜まるのを防ぎます)を摂りましょう。
●二日酔いを治すには、柿、グレープフルーツジュース、卵焼きなどを摂るとよいと言われています。

飲み過ぎの習慣は肝臓に障害を引き起こし、肝細胞内に中性脂肪がたまる「脂肪肝」、さらに進行すると「アルコール性肝炎」や肝臓が硬くなる「肝硬変」を起こします。ほかにもアルコールを摂り過ぎると、亜鉛の排泄が増加するので、亜鉛不足に陥りやすく、「味覚異常」、男性の場合は精子数が減少し、「性機能の低下」がみられます。亜鉛を多く含む(牡蠣、牛肉、豚レバー、タラバガニ、鰻のかば焼き、茹で筍、納豆など)を摂るようにしましょう。

 

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nutrituion.ueda.image 京都生まれ、京都育ち。
病院・保健所・役所などに勤務後、雑誌の企画・編集・執筆に携わる。やがて、伝統ある町の魅力を全国に伝えるかたわら、食の専門家としても活動を開始。料理本の企画・執筆、栄養指導を経て、やがて京都のおばんざい教室『よろしゅうおあがり』を立ち上げる。こうした経験をいかし、現在も医療の現場や企業での栄養管理・指導にまで活躍の場を広げ、今もさまざまな料理レシピを生みだし続けている。

 

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