病気にならない「予防栄養学」講座

第12回 心と体のバランスを整える

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POINT1 心と体のバランスを整える

POINT2 うつや心の病気は栄養不足が原因!?

POINT3 病気予防&健康増進のための栄養の取り方

 

毎日を健康に過ごすために必要なのは、適度な運動と心地よい睡眠、そしてバランスのとれた食事を摂ること。食事は身体をつくるもととなる栄養素を取り入れるための大切な役割をしていますが、ほかにも精神の働きを整える働きもしています。

 

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悩みなど精神的なものや、寒冷・疲労といった身体的な過度のストレスを受けると、これを防御しようと自律神経系や内分泌系、免疫系によってコントロールされながら身体の内部環境を一定に保とうとする力が働きます(これを恒常性維持機能といいます)。医学的には身体のあちこちに存在する内分泌腺から分泌されるホルモンの働きによるのですが、例えば、

  1. カルシウム代謝を調節する甲状腺、副甲状腺ホルモン
  2. 糖質代謝を調整する副腎皮質(アルドステロン、コルチゾールなど)
  3. 血圧を上昇させるアドレナリンは副腎髄質から分泌
  4. 血糖値を下げるインスリン、上げるグルカゴンは膵臓から分泌

といった具合です。

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これには栄養素が大きくかかわっています。ビタミンB群やカルシウム、マグネシウムには、神経の興奮を鎮め、精神を安定させる作用があります。不足するとイライラしてストレスを感じやすくなります。うつ状態の場合ビタミンもビタミンB群である葉酸、B6、B12が効果があるといわれています。

●葉酸・・・成長に欠かせないビタミンですが、正常な神経・脳機能を保つにも必要で、気分を落ち着かせる役割をします。
〈葉酸を多く含む食品〉 レバー、菜の花、枝豆、モロヘイヤ、ほうれん草、ブロッコリー、とうもろこし、春菊、豆、アボガド、いちご、すももなど

●ビタミンB6・・・たんぱく質の分解と合成に欠かすことのできないビタミンですが、神経伝達の生成にかかわり、精神を安定する働きをしています。不足すると不眠症やうつ状態になることもあります。
〈ビタミンB6を多く含む食品〉 サンマ、カツオ、マグロ、アジ、紅鮭、牛レバー、牛ヒレ、鶏レバー、牛もも(脂あり)、赤・黄ピーマン、玄米、バナナ、豆、ナッツ、トマト、アボガドなど

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●ビタミンB12・・・肝臓を再生させるためのたんぱく質や核酸の生成、脂肪の代謝、健康的な神経システムを保持する役割をしています。不足すると疲労、動悸などのほか記憶減退、認知症などにもつながるといわれています。
〈ビタミンB12を多く含む食品〉 レバー、サンマ、カキ、ヨーグルト、卵、乳製品など。また、ストレスを感じると副腎皮質などから分泌されるホルモンが分泌されますので、ホルモンの材料となるたんぱく質やその合成に不可欠なビタミンB群やビタミンCが必要となります。

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うつ、ストレスなど人の感情と大きなかかわりを持つのはたんぱく質(アミノ酸)です。外部からの刺激を脳に伝える神経伝達物質はアミノ酸からつくられます。
食物のたんぱく質は、消化されてアミノ酸やぺプチドの状態になって吸収されます。そして吸収されたアミノ酸は肝臓に運ばれ、血液を経て各組織へ送られます。各組織細胞では筋肉や爪などになる新しいたんぱく質がつくられほか、ホルモンや神経伝達物質などになるたんぱく質もつくられます。
穏やかな気分になる神経伝達物質セロトニンはトリプトファンというアミノ酸からつくられます。(トリプトファンは、体内でつくることのできない―必須アミノ酸のひとつで、食べ物から摂らねばなりません。そして、ビタミンB6、ナイアシン、マグネシウムとともにセロトニンを生成します。セロトニンは、精神安定、催眠効果のある神経伝達物質なのです)。また、トリプトファンはドーパミンやノルアドレナリンといった神経伝達物質の生成過程に、アミノ酸の一種であるチロシンと一緒に関与しています。
〈トリプトファンを多く含む食品〉牛・豚・鶏レバー、牛乳・乳製品、大豆など

 

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脳の唯一のエネルギー源といわれるブドウ糖も、トリプトファンを脳内に取り込むためには必要なものなのです。ですから、肉や魚などたんぱく質を食したあとに甘味のあるデザートを食べると、脳がリラックスするともいわれています。
ほかにもノルアドレナリン、ドーパミンの合成に関与し、精神を高揚させ、血圧を上昇作用のあるフェニールアラニン、うつ症状の改善に役立つメチオニンなどの必須アミノ酸も効果をあらわしています。
〈フェニールアラニンを多く含む食品〉 小麦胚芽、大豆・大豆製品、チーズなど
〈メチオニンを多く含む食品〉 牛乳、牛肉、レバー、卵、大豆製品など

 

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栄養バランスの良い食事を摂ることで、病気になるリスクを減らし、身体の調子を整えるのですが、バランスが悪いと血圧、血糖値、悪玉コレステロールなどに異常が現われ、脳疾患、心臓疾患、がん、糖尿病、腎臓病などの病気を引き起こします。いいかえると、栄養の不足、摂り過ぎが、内分泌系、代謝、免疫系の相互作用により維持されている身体の恒常性を損ない病気の発症に繋がるのです。
最初に学んだ「ダイエット」を考えてみましょう。
食事を制限すると、食事で摂った栄養を最大のエネルギー源として身体に溜めこみ、最小限のエネルギーで活動できる身体に変化していきます。少ない熱量で生活できるよう筋肉や骨などを栄養源としたり、骨からカルシウムを摂るようになるのです。
これが身体の防衛機能のひとつである生体恒常性(ホメオスタシス)です。摂取エネルギーを減らしても、恒常性が働いて、体重の減少はすぐにはみられないのです。
その間に身体の不調があらわれるのです。

適正体重を維持できるよう、「栄養バランス」の摂れた過不足のない「適量」の食事を、適切な「時間」に食べましょう。身体の恒常性が正しく機能するための栄養の第一歩です。自分にとって必要な正しい栄養知識をもち、身近なところでは、朝食は抜かない、飲酒は適量を、禁煙、定期的に運動をするなど目標を掲げて健康な毎日を送りましょう!

 

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nutrituion.ueda.image 京都生まれ、京都育ち。
病院・保健所・役所などに勤務後、雑誌の企画・編集・執筆に携わる。やがて、伝統ある町の魅力を全国に伝えるかたわら、食の専門家としても活動を開始。料理本の企画・執筆、栄養指導を経て、やがて京都のおばんざい教室『よろしゅうおあがり』を立ち上げる。こうした経験をいかし、現在も医療の現場や企業での栄養管理・指導にまで活躍の場を広げ、今もさまざまな料理レシピを生みだし続けている。

 

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