病気にならない「予防栄養学」講座

第15回 うつ状態を改善 心に効く栄養

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POINT1 20人に1人が苦しむ、 「うつ病」にならないために…

POINT2 他にもまだまだ!脳と心のバランスを整える栄養素

POINT3 うつ状態予防のための 栄養レシピ

 

大型連休で身体も心もリフレッシュしたはずなのに、なぜか憂うつな気分に閉じ込められてしまう。昔から木の芽立ちの頃にこんな症状が現れることから、5月病ともいわれてきました。しかし、今やこのような状態は医学的には「気分障害」の一つ「うつ病」と呼ばれ、予防や治療法として、食事が注目され始めています。

 

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うつ状態が続くと食欲がなくなり、体重が減少するように思われがちですが、調査結果などをみると、意外に肥満傾向にあるそうです。欧米の調査でも、肥満はうつ病になりやすく、うつ病は肥満になりやすいという、双方向の関係があることがわかっています。

身長(m)×身長(m)×22=標準体重(kg)
基礎代謝基準値×標準体重=1日の基礎代謝量
1日の基礎代謝量×身体活動レベル(1.5~2.0)=1日に必要なエネルギー量

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脳のエネルギーであるブドウ糖は、糖質(炭水化物)を摂ることで得られます。食事で糖質を摂ると血糖値は上がりますが、これを下げるインスリンが分泌され、もとの血糖値に戻り一定に保たれます。しかし、糖質は血糖値を急激に上げるものが多いので、ゆっくり血糖値が上がる食べ物を摂ること、また、ゆっくり血糖値が上がる食べ方をすることが大切です。血糖値の乱高下は身体にも負担がかかると同時に、心も不安定になるのです。

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・ゆっくり血糖値を上げる食べ物…
野菜、豆類、キノコ類、全粒穀物、ナッツ、納豆

・ゆっくり血糖値を上げる食べ方…

(1)野菜や海草サラダなど食物繊維の多い食べ物を最初に食べます。

(2)次に味噌汁やスープなど具材の多い汁物を食べます。

(3)3番目に肉や魚、卵、豆類などたんぱく質を食べます。

(4)最後にご飯やパンなどの炭水化物を食べます。(炭水化物は3大栄養素として必要なものです。質や量に注意して、よく噛んでゆっくり食べましょう。)

※果物は糖分が多いのですが、その糖分はフルクトース(果糖)なので吸収されても血糖値を上げにくいものです。

 

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人の身体を構成しているたんぱく質は、20種類のアミノ酸からできています。このうち9種類のアミノ酸は体内では合成されず、食べ物から摂る必要があり、これを必須アミノ酸といいます(→詳しくは2012年4月第2回「たんぱく質とアミノ酸」参照)。
身体を動かしたり、考えたりすることも脳内の神経細胞から神経細胞に信号が送られていて、この信号を伝えるのが脳内の神経伝達物質です。すでに数百の物質が知られていますが、大別するとアミノ酸、アミン、ペプチドの3種類に分けられます。そして、アミン、ペプチドはアミノ酸から作られており、言い換えると身体も心(脳)もアミノ酸から作られているといえます。
牛乳から発見された必須アミノ酸のひとつトリプトファンは、脳に運ばれると精神安定に効果のある神経伝達物質セロトニンを生成します(セロトニンは寝つきをよくするホルモン・メラトニンの原料にもなります)。また、トリプトファンはドーパミンやノルアドレナリンといった興奮性の神経伝達物質の生成過程で、チロシンとともに関与しますが、原料となるのは必須アミノ酸・フェニールアラニンです。他にはメチオニンにも抗うつ効果があるとされています。

○アミノ酸の働きから分類すると、
・脳を興奮させる働き:チロシン、フェニールアラニン、トリプトファン
・脳を鎮静させる働き:グリシン、タウリン、ヒスチジン、γ-アミノ酪酸(GABA)

 

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栄養素名 栄養素を含む主な食品
トリプトファン 牛・豚・鶏レバー、牛乳、チーズ、大豆、バナナ
フェニールアラニン 小麦胚芽、大豆、小豆、納豆、卵、肉類、魚介類
メチオニン 牛肉、レバー、牛乳、卵、カツオ、全粒小麦

 

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DHAやEPAは、主に魚の脂肪に含まれている脂肪酸。脳や神経細胞の発達や機能維持に重要な働きをしています。また、植物油などに含まれるα-リノレン酸は、体内に入ると代謝されてDHAやEPAに変換されます。DHAやEPAがうつ病の改善に有効な「神経栄養因子」をふやすこともわかってきました。これらを積極的に摂るためには、イワシやカツオ、ナッツ類などを食べることが有効です。
詳しくは、2012年5月第3回「脂質と脂肪酸」もご覧ください。

 

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ビタミンの中でもうつ病との関係が深いのは、ビタミンB6、B12、葉酸といわれています。特に、ビタミンB6はフェニールアラニンから体内合成されたチロシンを、脳内でドーパミンに変えるのに欠かせない栄養素。B6は神経細胞間で情報を伝達するアドレナリン、ドーパミン、セロトニンなど神経伝達物質の合成にもかかわっているといわれています。
ビタミンB12、葉酸は、メチオニンの正常な代謝に必要で、DNAやたんぱく質の合成、また、B6と同じようにノルアドレナリン、ドーパミン、セレトニンなどの神経伝達物質の合成に重要な役割を果たしています。

ミネラルの中では、鉄、亜鉛、セレン(メチオニンの代謝を助ける)不足の場合、うつ病にかかるリスクが高いこともわかってきています。

 

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栄養素名 栄養素を含む主な食品
n-3系多可不飽和脂肪酸 マグロ、イワシ、サバ、ブリ、サンマ、ウナギ、カツオ、大葉
ビタミンB6 サンマ、カツオ、マグロ、牛レバー、牛ヒレ、バナナ
ビタミンB12 シジミ、赤貝、サンマ、カキ、レバー、ヨーグルト、卵
葉酸 レバー、菜の花、枝豆、ほうれん草、ブロッコリー、イチゴ
レバー、牛もも肉、海苔、赤貝、サンマ、アサリ、小松菜、大豆
亜鉛 カキ、タラバ缶、牛肩肉、豚レバー、レンズ豆、そら豆、大豆
セレン ワカサギ、イワシ、ホタテ、ネギ

 

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緑茶は、ビタミン、ミネラルが豊富でカテキンやテアニンなど精神安定作用があり、最近の研究では、テアニンの神経栄養因子を増やす可能性も期待されています。
さらに、腸内細菌叢の改善に役立つ食べ物にも、こうした脳と心のバランスを整える効果が期待されています。腸の壁面を覆って生息している腸内細菌は、大別すると…

・善玉菌(有用菌)…乳酸菌、ビフィズス菌
・悪玉菌(腐敗菌)…ウェルシュ菌、ブドウ球菌
・日和見菌…大腸菌、バクテロイデス

となっており、健康体であれば、こうした腸内細菌のバランスが保たれています。
腸と脳は密接に関連しており、腸内細菌はストレスや心の健康に大きく関わっていることもわかってきました。生きた乳酸菌やビフィズス菌を摂ると同時に、オリゴ糖や食物繊維など(消化・吸収されずに腸内で善玉菌の栄養となってその増殖を促してくれる)も食事で摂るようにしましょう。

ここまで読めばおわかりのように、うつにならないための食事というのは、糖質、脂質、たんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維などの栄養素を適量でバランスよく摂ることです。良質な睡眠、適度な運動、生活習慣病になりにくい食べ物を規則正しい食事で摂ることが大切です。

 

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心と脳のバランスを整えるとされる栄養素をバランスよく含んだ食品としておすすめなのは、鶏レバー。たんぱく質、ビタミン、ミネラル、葉酸や鉄を豊富に含む優れた食品です。特にビタミンB12を多く含むので、うつ状態をやわらげるのにおすすめです。

□葉酸の1日摂取基準は、成人男女200㎍(推定必要量)です。
□鶏レバーと鶏むね肉の栄養価(100g当たり)を比べてみましょう。

 

鶏もつといえば、レバー(肝臓)のほかハツ(心臓)、砂肝、キンカン(卵巣)などで、これを甘辛く煮たものが一般的です。鶏レバーは牛・豚に比べると臭みが少ないので、レバーが苦手な人も料理法を工夫すれば、食べやすくなります。

熱量kcal たんぱく質g 鉄mg B6mg B12㎍ 葉酸㎍
鶏レバー 111 18.9 9.0 0.65 44.4 1300
鶏むね肉 244 19.5 0.3 0.35 0.3 5

 

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・材料(2人分)
鶏レバー 160g 牛乳適量 酒大さじ1 しょうゆ大さじ2 さとう大さじ1
生姜すりおろし大さじ1/2 ニンニクすりおろし小さじ1 片栗粉・小麦粉各大さじ2 油適量

・作り方

(1)血抜きして、牛乳に浸した鶏レバーをボール取り、酒、さとう、しょうゆ、生姜、ニンニクを加えて混ぜ合わせ、15分ほど置いて味が馴染んだら、片栗粉と小麦粉を表面に付ける。

(2)170度に熱した油で(1)を揚げる(温度が高すぎたり、揚げすぎると、皮が破れて油が飛ぶので注意しましょう)。

大葉を巻いて食べれば、DHAやEPAを摂る効果もあり、臭い消しにもなります。

 

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・材料(2人分)
鶏レバー160gのから揚げ 玉ねぎ1/2個 小かぶ1個 パプリカ(赤・橙・黄合わせて)1/2個
しめじ1/4袋 酢大さじ4 さとう大さじ1/2 塩小さじ1/2 オリーブ油大さじ3

・作り方

(1)玉ねぎは皮と芯を除き、櫛形に切る。かぶは皮をむいて半分に切り、葉の一部はざく切りにする。パプリカは種を除き、幅1cmのタテ切りにする。しめじは石づきを取り、ばらばらにほぐしておく。

(2)(1)の野菜を固いものから、さっと熱湯をくぐらせ、水気を取る。

(3)調味料を合わせた中に、あつあつの鶏レバーから揚げ、(2)の野菜を加えて、粗挽き胡椒やケッパ、ローリエなど香草と一緒に漬け込む。

 

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nutrituion.ueda.image 京都生まれ、京都育ち。
病院・保健所・役所などに勤務後、雑誌の企画・編集・執筆に携わる。やがて、伝統ある町の魅力を全国に伝えるかたわら、食の専門家としても活動を開始。料理本の企画・執筆、栄養指導を経て、やがて京都のおばんざい教室『よろしゅうおあがり』を立ち上げる。こうした経験をいかし、現在も医療の現場や企業での栄養管理・指導にまで活躍の場を広げ、今もさまざまな料理レシピを生みだし続けている。

 

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