病気にならない「予防栄養学」講座

第19回 食欲の秋!もう一度見直そうメタボリック症候群

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POINT1 もう一度見直そうメタボリックシンドローム

POINT2 メタボリックシンドロームを防ぐ食習慣って?

POINT3 メタボ予防の栄養レシピをご紹介

 

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9月も半ばを過ぎると、朝夕の気温が下がり、食欲も増してきます。

夏の暑さで食欲が落ち、栄養のバランスが崩れていたのを回復させるために食欲が増すのでしょうか? いろいろな要因が考えられますが、その一つとして考えられているのが、日照時間。秋の日は「釣瓶落とし」と言われるように、夏至と秋分を比べると日の入りが1時間半ほど早くなり、夕方はすぐ暗くなります。もちろん日の出も遅くなり、1日の日照時間は減少します。脳内で働く神経伝達物質の一つ「セロトニン」は、太陽の光を浴びると目から脳に信号が送られ、脳内でのセロトニン合成が活発になるのです。不足すると、ストレス障害やうつ、睡眠障害などの原因になる(予防栄養学第15回うつ参照)ことは知られていますが、消化、排便、体温調節など様々な体の働きにも関わっています。日照時間が短かくなりセロトニン分泌量が減少した分を、食べ物からのセロトニンで補うために食欲が増すのではないかとも言われています。ほかにもセロトニン不足により、満たされた気分にならず、食べることでこれを解消しようという場合もあります。

【セロトニンの生成】

トリプトファン 必須アミノ酸のひとつから作られています。体内では合成できないので、食べ物から摂りましょう。
多く含む食品は、牛・豚・鶏レバー、牛乳、大豆製品、小麦胚芽、卵、バナナ
ビタミンB6 トリプトファンが血液から脳に運ばれると、ともに働きセロトニンを生成します。
多く含む食品は、サンマ、カツオ(春)、アジ、サケ、レバー、赤・黄ピーマン、さつま芋、バナナ
炭水化物 トリプトファンが脳内に取り込まれるのを助けます。
多く含む食品は、穀類、いも類、砂糖

 

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気温が下がると、体温維持のための熱(エネルギー)を作り出す食べ物を多く摂り入れる必要があるのです(体温を1度上げるためにはエネルギー量を14%アップしなければなりません)。

ただし、エネルギー源となる栄養素を糖質や脂肪から摂るのではなく、まずは筋肉量を増やし、基礎代謝を上げる食べ物を摂るようにしなければなりません。

(夏は暑さを乗り切るためスタミナのつく食事・高カロリー食を、と思いがちですが、夏は体温維持のための消費カロリーは少なく、基礎代謝も冬に比べて10%ほど低いのです。

夏に食欲が落ちるのは、体がエネルギーを欲しないからで、逆に高カロリー食を続けると、太り過ぎの心配が出てきます。)

でも、栄養バランスが悪く、夏に体力が落ちてしまう場合もあります。この場合は良質のたんぱく質、ビタミン、ミネラル、食物繊維など、必要な栄養を食事から摂り、健康な体づくりを心掛けましょう!くれぐれも食欲に任せて過食にならないよう、食習慣を見直すことも大切です。

 

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内臓に脂肪が蓄積し、生活習慣病(肥満症、高血圧症、脂質異常症、糖尿病など)になりやすい危険因子を複数併せ持った状態をメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群:メタボ)と呼びます。国民・栄養調査の結果から40~74歳では予備軍を併せると男性の2人に1人、女性の5人に1人がメタボといわれています。

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不適切な生活習慣(不適切な食生活、運動不足、過剰なストレス、睡眠不足、飲酒、喫煙など)を続けるとメタボ予備軍から病気発症へという危険性が高くなります。

(→予防栄養学第3回「脂質と脂肪酸」、第5回「糖質と炭水化物」も参照ください)

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食事で摂った栄養(糖質、脂質、たんぱく質)は、エネルギーとして使われ、余った分は肝臓に送られて中性脂肪が合成されます。この中性脂肪は血液中に入り全身を回って、臓器や筋肉のエネルギー源となりますが、使われなかった分は脂肪組織(皮下脂肪や内臓脂肪)に蓄えられるのです。

皮膚のすぐ下にある脂肪を「皮下脂肪」、内臓の周りに付く脂肪を「内臓脂肪」と呼んでいます。本来、皮下脂肪は主に内臓を保護したり、体温を保つ働きをします。一方、内臓脂肪は食事から摂ったエネルギー源を一時的に脂肪に合成し蓄えているもので、必要に応じて生命維持活動に使われています(筋肉を動かすエネルギーになるのは、内臓脂肪です)。

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しかし、摂取カロリーが消費カロリーをオーバーする食生活が続くと、肝臓から大量の中性脂肪が血中に放出されます。同時に内臓脂肪の細胞が大きくなりすぎ、中性脂肪の分解がスムーズに行われず、結果的に血液中に中性脂肪が増加し、HDL(善玉コレステロール)が減少するなどメタボの状態になるのです。

また、脂肪細胞は、脂肪をためこんで必要に応じて遊離脂肪酸やグリセリンを放出するエネルギー貯蔵庫とみなされてきましたが、近年、生理活動物質(アディポサイトカイン)を活発に産生・分泌している人体内最大の内分泌器官であることが明らかにされてきました。これには善玉物質と悪玉物質があり、肥満でない健康体では善玉、悪玉の分泌バランスはよい状態で保たれています。

【善玉】

アディポネクチン 傷ついた血管壁を修復する働きをしていて、動脈硬化を予防します。また、インスリンの働きを高める作用、血圧を下げる作用などがあります。
レプチン 食欲を抑える働きをしていて、たくわえている脂肪が増加すると分泌が高まって食欲を低下させ、肥満を防ぎます。しかし、脂肪がたまり過ぎると、レプチンの分泌が過剰になっても、満腹中枢が適切に働かなくなります。

【悪玉】

PAI-1(パインワン) 血栓を溶かす働きのあるプラスミンのはたらきを妨げ、 血液を固まりやすくし、血栓のできやすい状態にします。
TNF-α
(ティエヌフアルフアァ)
インスリンの働きを妨げる作用があり、血糖値を上げ、糖尿病のリスクを高めます。
アンジオテンシノーゲン 血圧を上昇させます。

 

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海藻類、サバ、大豆製品など、食物繊維、EPA、マグネシウムを多く含む食品です。
キウイ、リンゴ、トマトなどにも同様の働きのある食物由来のたんぱく質、オスモチンが含まれているといわれています。

 

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メタボリックシンドロームはもちろん、その予備軍と診断された場合でも、食習慣を変えることで改善が見込めます。

【ケースに合わせた食べ方チェック!】

□肥満の場合・・・

  • 1)食事量を減らす
  • 2)炭水化物、油脂類、アルコール飲料を減らす
  • 3)主食、主菜、副菜を揃え、3食規則正しく食べる
  • 4)海藻、こんにゃくなどカロリーのない食品で満腹感を得るようにする

以下の場合は、「肥満」の食べ方に加えて意識してみましょう

□高血圧の場合・・・

  • 1)減塩(7~8g以内/高血圧の場合は6g以内)
  • 2)塩蔵品、加工品は避ける
  • 3)食物繊維、カリウムの多い食品を摂る

□脂質異常の場合・・・

  • 1)飽和脂肪酸、コレステロールの多い食品は控える
  • 2)不飽和脂肪酸の多い食品を摂る
  • 3)食物繊維を多く摂る

□高血糖の場合・・・

  • 1)「高血圧」「脂質異常」の食べ方に準ずる

 

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中性脂肪(脂肪)は脂肪酸とグリセリンで構成されていて、この脂肪酸の種類により体内での働きも異なります。→(第3回脂肪と脂肪酸の「脂肪酸の働き」参照)

構造的な特徴から、飽和脂肪酸と不飽和脂肪酸に分けられますが、血液中の中性脂肪や悪玉コレステロールを増やし、メタボや生活習慣病の要因となる働きをするのが、飽和脂肪酸です。

近年、よく話題になる「オメガ3(n-3系脂肪酸)」は、多価不飽和脂肪酸の一つで、細胞膜や生理活性物質の材料となる物質です。中性脂肪を減らし、善玉コレステロールを増やすなど、生活習慣病を予防する働きをします。

魚の油に含まれるIPA(イコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)がよく知られていますが、しそ、えごま、くるみ、えごま油、亜麻仁油などに含まれるα-リノレン酸もこの仲間です。α-リノレン酸は体内で合成できず、食べ物から摂らねばならない必須脂肪酸で、体内に摂り入れられると、代謝されてIPAからDHAに変換されます。

 

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今月は、DHA・EPA豊富な「秋サバ」、食物繊維たっぷりの「ひじき」を使った料理をご紹介します。

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・材料(2人分)
生鯖片身(正味200g)、塩小さじ1、酒大さじ1/2、たまねぎ1/8個、赤・黄パプリカ各1/4個、小麦粉大さじ1と1/2、カレー粉小さじ2、A【酢1/2、塩小さじ1、さとう大さじ1、しょうゆ小さじ1、一味少々】揚げ油適宜

・作り方

(1)鯖は骨を取り除き食べやすい大きさに切り、塩と酒を振り暫く置いてから、カレー粉を加えた小麦粉をつけて、170~180℃に熱した油でカラリと揚げます。

(2)たまねぎは薄切り、パプリカは5㎜幅に切ってさっと茹で、Aの合わせ酢に加えます。

(3)(1)の揚げたてを(2)に浸し、味がなじんだらいただきます。

★合わせ酢は市販のすし酢を利用すれば簡単。一味は赤唐辛子を使えば辛さも増します。

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・材料(2人分)
乾燥ひじき2g、枝豆(豆のみ)10g、木綿豆腐1/4丁(100g)、さとう小さじ2、塩小さじ1/3、練ごま大さじ1/2、マヨネーズ大さじ1/2

・作り方

(1)ひじきは水で戻して熱湯をくぐらせ、枝豆は鞘ごと塩で揉んで茹で、中の豆を取り出し薄皮をむいておく。

(2)豆腐は崩して布巾かペーパータオル(2枚)に包んで水切りし、ボールに入れて、あたりごま、調味料を加えてよく混ぜ合わせ、(1)のひじきと豆を加えて和えます。

★豆腐はすり鉢で擂り潰せば、より滑らかな食感になります。

 

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nutrituion.ueda.image 京都生まれ、京都育ち。
病院・保健所・役所などに勤務後、雑誌の企画・編集・執筆に携わる。やがて、伝統ある町の魅力を全国に伝えるかたわら、食の専門家としても活動を開始。料理本の企画・執筆、栄養指導を経て、やがて京都のおばんざい教室『よろしゅうおあがり』を立ち上げる。こうした経験をいかし、現在も医療の現場や企業での栄養管理・指導にまで活躍の場を広げ、今もさまざまな料理レシピを生みだし続けている。

 

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