病気にならない「予防栄養学」講座

第2回 タンパク質とアミノ酸

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POINT1 身体の中で作ることのできないアミノ酸(必須アミノ酸)は9種類

POINT2 身体をつくるアミノ酸の1/3は食事から摂らなくてはならない

POINT3 たんぱく質は不足しても、摂りすぎても×

 

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「たんぱく質」と聞いてまず思い浮かぶのは、栄養素のひとつで、卵、肉、魚などに多く含まれる動物性たんぱく質、大豆や豆腐などに多く含まれる植物性たんぱく質のように食品成分としてではないでしょうか。

また、たんぱく質は皮膚、臓器、筋肉など身体を構成する細胞の主成分であり、ホルモン、免疫抗体、酵素など身体の機能を調節する成分としても重要であり、生命の維持に欠くことのできないものです。しかし、たんぱく質を含む食品を食べると、そのまま人の身体のたんぱく質(体たんぱく質)になるわけではありません。口から入ると、胃液・膵液・腸液によって「アミノ酸」にまで分解されます。分解されたアミノ酸は、小腸から吸収され、肝臓に運ばれ、さらに筋肉やその他の組織に送られて、体たんぱく質の合成に使われるのです。

自然界には多くのアミノ酸が存在しますが、たんぱく質をつくるのは、わずか20種類のアミノ酸で、50~1000が結合しているのです。このうち9種類は人間の体内では合成されず、食品から摂る必要があり、これを「必須アミノ酸」といいます。また、食品たんぱく質は、アミノ酸の構成により体内での利用率も異なります。良質たんぱく質食品とは、たんぱく質の含有量が多く、利用率の高いもので、鶏卵・牛乳・牛肉(サーロイン)・豚肉(ロース)・鶏肉(胸肉)・アジ・サケなどがあげられます。

 

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和名 効能 不足すると… 摂り過ぎると… 多く含む食品
トリプトファン ・睡眠を正常にする・抗うつ作用
・不安や緊張を和らげる
・更年期障害を改善
・禁煙補助
・睡眠障害・精神不安定 ・肝硬変 牛、豚、鶏レバー、牛乳、チーズ、大豆、
大豆製品、そば、スパゲティ
フェニールアラニン ・抗うつ作用・精神高揚
・鎮痛作用
・ダイエット効果
・気分の落ち込み ・高血圧 そば、小麦粉、そうめん、大豆、大豆製品、あずき、
納豆、チーズ、肉類、
魚介類、卵
リシン ・肝機能向上・疲労回復
・成長促進
・集中力アップ
・めまい、吐き気・貧血
・肝機能低下
・肝機能障害 魚介類(サワラ・真サバ)、大豆、大豆製品、
納豆、レバー、卵
ロイシン ・肝機能向上・筋肉強化 ・疲れやすくなる ・免疫機能の低下・体重減少 牛肉、レバー、牛乳、チーズ、トウモロコシ
イソロイシン ・成長促進・筋肉強化
・血管拡張
・免疫機能の低下・神経障害 ・体重減少 鶏肉、子牛肉、サケ、牛乳、
プロセスチーズ
バリン ・成長促進・筋肉強化 ・成長不良 ・体重減少 鶏肉、子牛肉、レバー、ドライミルク、チーズ
トレオニン ・脂肪肝を防ぐ・成長促進 ・食欲不振・貧血
・成長不良
・胃腸障害・頭痛 卵、七面鳥、スキムミルク、
さつまいも、ゼラチン
ヒスチジン ・こどもの成長促進に不可欠・神経機能を助ける
・関節炎の症状緩和
・成長不良 とくになし 鶏肉、子牛肉、ハム、チェダーチーズ、
ドライミルク
メチオニン ・かゆみや痛みの軽減・肝機能の維持
・うつ症状の改善
・利尿作用低下・むくみ
・肝機能障害
・肝機能障害・動脈硬化 牛乳、生肉、レバー、全粒小麦、
カツオ

 

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身体を作る主なたんぱく質は、組成面から分けられ、それぞれ名称で呼ばれます。

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私たちの体の中では、身体の組織を健全な状態に保つために、摂取されたたんぱく質を使い、古くなった細胞を新しい細胞に取り換えていくという代謝が毎日行われています。

すなわち、体たんぱく質は合成と分解、排泄を繰り返し、毎日一定量が新しいものに入れ替わっているのです。この合成と分解の繰り返しを代謝回転と呼びます。代謝回転により、たんぱく質の半量が入れ替わる期間を半減期といい、肝臓の組織を構成するたんぱく質で約2週間、筋肉組織のたんぱく質で約180日などといわれるように、構成部位によって変わります。

通常、合成に必要なアミノ酸の2/3は、体内で分解されたアミノ酸を再利用し、あとの1/3は食事から摂ります。そのためには、毎日必要量のたんぱく質を摂取せねばなりません。

 

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1日の摂取量として推奨されるたんぱく質は、成人男性で60g、女性で50gを推奨量とされていますが、若い女性のダイエット(不適切な食事療法による減量)や高齢による低体重の場合は、血液生化学データ、体重・たんぱく質データを用いて、栄養状態を医者などに判定してもらった上で、体重1kg当たり2g、エネルギー比率20%未満の範囲で摂るといいでしょう。

たんぱく質が不足すると、身体は体内のたんぱく質を分解して不足を補うため、筋肉量の減少による体力の低下、免疫力の低下、貧血などさまざまな障害があらわれます。また、体力が低下すると体内の代謝も下がることのよる冷え症、ホルモン減少による骨粗しょう症は、高齢者のみならず、若い女性も将来的に危ぶまれます。関節痛は関節の間にある軟骨が磨耗するために起こる病気ですが、軟骨の材料となるたんぱく質(コラーゲン)の不足のほか、関節を支える筋肉量の不足も原因のひとつです。

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一方、たんぱく質は神経伝達物質の合成を促す働きもあり、脳の働きを活性化させ、精神を安定させますが、不足すると精神的にも不安定になります。
むくみの原因のひとつもたんぱく質不足があげられます。尿中にたんぱく質が沢山出る「ネフローゼ症候群」や肝臓でのたんぱく質の産生が低下する「肝硬変」などによるものではありませんが、血管中のたんぱく質濃度が低下した場合におこるのです。
ほかにも、乳児や高齢者の場合の下痢なども見落としがちですが、低たんぱく質によるものもあり、血管が弱くなったための脳卒中などもあげられています。

ただし、たんぱく質はとても大事な栄養素ですが、そればかり摂ればいいというわけではありません。ダイエットのためにご飯を抜いて、プロテインなどのたんぱく質を過剰に摂取すると思わぬ症状につながることも。たんぱく質は、糖質や脂質のように体内に貯蔵する仕組みがなく、過剰分はグルコース(ブドウ糖)や脂肪酸に変換され利用されます。この時にアンモニアが生成され、肝臓で処理されて尿素となり腎臓に行き、尿として排泄されます。そのために腎臓に負担をかけ、慢性化すれば腎機能障害を引き起こすおそれもあります。また、たんぱく質が体内のカルシウムを尿中に排泄し、骨粗しょう症の要因にもなります。

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「日常の飲食物」「療養食」で、肥満の人が食事療法で体重を落とすことのみでなく、痩せすぎの人も食事により適正体重に戻すことなのです。 痩せすぎによるたんぱく質不足の弊害はいままで述べてきましたが、「太るから糖質や脂肪を抜き、たんぱく質やビタミン類を充分摂っているから大丈夫」と思っている人も危険です。 たんぱく質は栄養バランスが取れていれば、筋肉など体たんぱく質として利用されますが、糖質を摂らずエネルギー不足をおこすと、体たんぱくがアミノ酸に分解され、グルコースに変換され、エネルギーになります。脂質とたんぱく質についても同様に関連がありますので、次にみていきましょう。

 

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nutrituion.ueda.image 京都生まれ、京都育ち。
病院・保健所・役所などに勤務後、雑誌の企画・編集・執筆に携わる。やがて、伝統ある町の魅力を全国に伝えるかたわら、食の専門家としても活動を開始。料理本の企画・執筆、栄養指導を経て、やがて京都のおばんざい教室『よろしゅうおあがり』を立ち上げる。こうした経験をいかし、現在も医療の現場や企業での栄養管理・指導にまで活躍の場を広げ、今もさまざまな料理レシピを生みだし続けている。

 

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