病気にならない「予防栄養学」講座

第20回 「ロコモティブシンドローム」を知っていますか?

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POINT1 「ロコモ」って何?

POINT2 ロコモを予防する食生活

POINT3 ロコモを予防する食事(骨や筋肉に効く食事)

 

空気も澄んで、すがすがしい秋は、スポーツに最適の季節です。健康づくりのためにも大いに体を動かしましょう!ほどよい運動を習慣的に行うことは、生活習慣病予防や、精神ストレス解消などにも役立つのですが、現在運動習慣のある人の割合は30%前後、また、日本人の1日平均歩数も、平成23年には多少の増加がみられるとはいえ、昔に比べると減少しています。

そこで厚生労働省は、生活の中で体を動かすことの重要性を再認識してもらうため、国民の健康づくり運動「健康日本21」の第2次計画として「健康づくりのための身体活動基準2013」を4月からスタートさせました。健康で元気な体を保つために“今より少しでも多く体を動かす”と呼びかけています。

そして、これから政府が広めようとしているのが「ロコモ」。認知度は前年の17.3%から少し上昇して26.6%となりましたが、まだまだ知られていないのが現状です。ロコモは高齢者に多い生活習慣病ですが、体力に自信のある30~40代からの予防対策が大切です。

 

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厚生労働省がこのほど示した健康づくりのための身体活動基準は、「身体活動」は、「生活活動」と「運動」に分けられ、生活習慣病予防のためには運動基準を満たしている方がよいが、生活活動のみで身体活動基準を達成するのもよい、としています。

<18~64歳>

●身体活動基準(生活活動+運動)
3メッツ以上の強度の身体活動(歩行またはそれと同等以上)を毎日60分行う
●運動基準
3メッツ以上の強度の運動(息が弾み汗をかく程度)を毎週60分行う

<65歳以上>

●強度を問わず、身体活動を毎日40分行う

※身体活動とは、安静状態より多くのエネルギーを消費する動作で、「生活活動」とは、日常における労働、家事、通勤、通学などの身体活動を示します。また、「運動」とは、体力の維持・向上を目的として、計画的・継続的に行う身体活動を示しています。

※メッツとは、身体活動の強度を表す単位で、運動によるエネルギー消費量が安静時の何倍に当たるかを示すものです。

1メッツ=座って安静にしている状態

3メッツ以上の生活活動(例)
・家での掃除・・・3.3~3.5メッツ
・自転車に乗る・・・3.5~6.8メッツ
・家での歩行を含む片づけ・・・3メッツ
・箱や家具を2階に運ぶ・・・9メッツ

3メッツ以上の運動(例)
・軽い筋肉トレーニング・・・3.5メッツ
・ラジオ体操第一・・・4メッツ
・ダンス(バレエ練習)・・・5.0メッツ
・水泳(ゆっくり平泳ぎ)・・・5.3メッツ
・ジョギング(ゆっくり)・・・6.0メッツ

 

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ロコモとは「ロコモティブシンドローム」(運動器症候群)の略で、骨や関節、筋肉・神経などの運動器が、加齢による衰えや疾患により、要介護になる危険性が高い状態をいいます。症状としては、痛み、関節の動きの制限、筋力の低下などですが、やがて立ち上がれない、歩けないなどで介護が必要となったり、寝たきりになったりするのです。

ロコモは高齢者に多い生活習慣病ですが、若いからと言って決して油断してはいけません。日頃から歩かない、階段を使わないなど体を動かさない生活をしていると、筋肉や骨も知らず知らずのうちに衰えます。また、適度な運動と同時に、質を考えたバランスのよい食事を摂ることも大切です。無理なダイエットや偏食を繰り返すと、骨量や筋肉量も減り、将来的にはロコモ予備軍になる可能性が高くなります。

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(1)カルシウム

骨は一度出来上がるとそのままのように思われがちですが、他の細胞と同じように新陳代謝を繰り返しながら生まれ変わっています。新しい骨をつくる骨芽細胞「骨形成」と、古くなった骨を壊す破壊細胞「骨吸収」の働きによるのですが、若い人では1年で20~30%、約3年をかけて全身の骨が入れ替わるといわれています。骨はカルシウムのほか、リンやマグネシウムなどのミネラルや、たんぱく質(コラーゲン)、脂質などたくさんの成分で構成されています。

骨を形成する中心的な成分は「カルシウム」です。食べ物から摂るカルシウムが不足すると、副甲状腺ホルモンが働き、血液中に骨の中のカルシウムを溶け出させます。高齢になるとカルシウム吸収率が下がりますので、不足しないよう食事で摂るようにしましょう。また、女性ホルモンはカルシウム吸収を助ける働きをしますが、閉経後の女性はホルモンの分泌が低下するので、高齢の女性はカルシウムが不足しがちです。

・カルシウムを多く含む食品→牛乳・乳製品、小魚、大豆製品、モロヘイヤ・小松菜など一部の緑黄色野菜、昆布・わかめなど

※カルシウムは食品によって吸収率が異なります。牛乳・乳製品は約50%、小魚は約30%、緑黄色野菜は約20%です。野菜から摂る場合は、カルシウムの吸収をアップするクエン酸を含む酢やレモン、リンゴを合わせて摂りましょう。胃酸の分泌が低下する高齢者はクエン酸カルシウムの方が吸収しやすいのです。

(2)リン、マグネシウム

リンはカルシウムと結合して骨の硬さを保っています。マグネシウムは骨や歯にカルシウムが行きわたるように調整し、骨の形成を助けます。

・リンは一般食品に含まれていて、不足することはありません。

・マグネウムを多く含む食品→魚介類、海藻類、大豆製品、種実類など

(3)コラーゲン

体内に含まれるたんぱく質で、40%は皮膚に、20%は骨や軟骨に存在し、骨の強度を高める働きをしています。

・コラーゲンを多く含む食品→鶏の手羽、皮、フカヒレ、牛すじなど

(4)ビタミンD、ビタミンK

ビタミンDは腸でのカルシウムの吸収を高め、カルシウムが骨に沈着するのを助けます。ビタミンKは吸収されたカルシウムが、骨に定着するのを助けます。

・ビタミンDを多く含む食品→ニシン、アン肝、紅鮭、イワシ丸干し、サンマ、皮蛋、鶏卵、キクラゲなど

・ビタミンKを多く含む食品→緑黄色野菜、海藻、納豆、豆乳など

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(5)ビタミンB6、ビタミンB12、葉酸はコラーゲンの結びつきを強めることで、骨質を高めます。

・B6を多く含む食品→レバー、カツオ、マグロ、赤ピーマン、バナナなど

・B12を多く含む食品→レバー、シジミ、赤貝、サンマ、カキなど

・葉酸を含む食品→菜の花、枝豆、ほうれん草、ブロッコリー、アボカド、イチゴなど

 

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骨の組織は鉄筋コンクリートに例えると、鉄筋にあたるのがコラーゲン、コンクリートにあたるのが、カルシウムをはじめとするミネラルです。コンクリートを増やしても、鉄筋で強化しなくては、建物が頑丈にならないのと同じで、骨を丈夫にするには、カルシウムで骨量を増やし、コラーゲンで骨質を高める必要があるのです。ミネラルとコラーゲンの比率は、ほぼ50%ずつで構成されています。

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コラーゲン分子が酵素によって結びついたものを「コラーゲン架橋」といい、これが規則正しく、しっかりした状態を「善玉架橋」といいます。血液中にホモシステイン(アミノ酸の一種)や酸化物質が増えると、その結びつき方が弱い「悪玉架橋」となり、骨質が弱くなります。コラーゲンの束が規則正しく並んだ状態だと、骨は丈夫なだけではなく、柔軟性があり、折れにくくなるのですが、骨量が多く硬いだけでは、折れやすくなってしまいます。

 

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骨を弱くする成分・・・摂り過ぎに注意しましょう!

カルシウムの吸収を妨げる塩分、加工食品に含まれるリン(リン酸)やアルコール、カフェインは、カルシウムの尿への排泄を促す作用があります。

筋肉を強くする食べ物

(1)肉類、魚介類、豆類、乳製品などいろいろな良質たんぱく質を摂りましょう。

(2)エネルギー源となる糖質脂質が不足すると、筋肉を構成するたんぱく質がエネルギーとして使われてしまうので、糖質、脂質も必要です。

(3)たんぱく質の合成や分解を促進する働きをするビタミンB6、B12、葉酸が不足しないようにしましょう。

 

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・材料(2人分)
サケ缶(オイル漬け)100g、小松菜50g、赤パプリカ30g、エリンギ・しめじ60g、かぶら80g、たまねぎ50g、牛乳100㏄、生クリーム大さじ2、油大さじ1、白ワイン(または酒)50㏄、塩、こしょう少々、(ピザ用チーズ20g)

・作り方

(1)小松菜は幅5㎝のざく切り、パプリカ、かぶら、たまねぎは1㎝ぐらいの角に切ります。エリンギは薄切りして大きい場合は半分に切り、しめじは石づきを取ってほぐしておく。

(2)鍋に油を入れて野菜を炒め、油切りしたサケを加えたら、白ワインを注ぎ、塩・こしょうして軽く炒め、牛乳を加えたら火を弱め、野菜が柔らかくなるまで煮込む。

(3)仕上げに生クリームを入れて味を調え、耐熱容器に入れて、オーブントースターなどで表面に焦げ目が付く程度に焼く
(好みでチーズを上にのせてもよい)。

★「リンゴとバナナのヨーグルトサラダ」を添えて、カルシウムの吸収をアップ
(リンゴ、バナナは小口切りにしてレモン汁をかければ、ビタミンC強化と変色を防ぎます)

 

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・材料(2人分)
鶏手羽先4本、大豆缶100g、トマト缶大さじ6、酢大さじ1、めんつゆ大さじ3、塩・こしょう少々、パセリ適宜

・作り方

(1)手羽先は、関節のところで切り離すか、手で折り、縦に骨に添って切り目をいれ、塩、こしょうする。

(2)温めた鍋に(1)を入れて表面を軽く焼き、酢を加えて表面にきれいな焦げ目がついたら、大豆、トマト缶、めんつゆを入れて煮込む。水分が足りないときはトマト汁で調整する。

(3)塩で味を調え、出来上がりに刻みパセリを振ってすすめる。

★手羽先を柔らかく仕上げたいときは、酢+鶏ガラスープ(手羽がかぶるぐらいの水分)で20分ほど煮込んでから、大豆などを合わせるとよい。
大人には、タバスコやチリペッパーなど辛味を加えと、パンに良く合います。

 

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・材料(2人分)
引き割り納豆2パック、すりおろし蕪100g、ねぎ・溶き辛子適宜

<かぶら蒸し>
出汁1カップ、しょうゆ小さじ2、塩少々、みりん小さじ1、水溶き片栗粉大さじ1

・作り方

(1)納豆+味しょうゆ(市販でついているもの)をよくかき混ぜ、器に盛り、軽く水気を除いたすりおろし蕪をところどころにのせ、小口切りねぎと溶き辛子を添えてすすめる。

(2)寒くなったら、かぶら蒸しに。
器に盛った納豆にすりおろし蕪をこんもりのせ、ラップをして電子レンジ600Wで約1分半加熱。あらかじめ、出汁、しょうゆ、みりんで味を調え、片栗粉でとろみをつけたあんを用意し、ねぎを加え、加熱した納豆かぶらにかけて、辛子をのせて供する。

★納豆かぶらをレンジにかけて、型崩れした場合は、周りをスプーンで丸く整え、あんかけするとよい。

 

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nutrituion.ueda.image 京都生まれ、京都育ち。
病院・保健所・役所などに勤務後、雑誌の企画・編集・執筆に携わる。やがて、伝統ある町の魅力を全国に伝えるかたわら、食の専門家としても活動を開始。料理本の企画・執筆、栄養指導を経て、やがて京都のおばんざい教室『よろしゅうおあがり』を立ち上げる。こうした経験をいかし、現在も医療の現場や企業での栄養管理・指導にまで活躍の場を広げ、今もさまざまな料理レシピを生みだし続けている。

 

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