病気にならない「予防栄養学」講座

第21回 冷え込み:食べる高血圧予防

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POINT1 高血圧と血管のカンケイ

POINT2 食べて高血圧を予防しよう!

POINT3 高血圧予防のための「減塩レシピ」

 

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健康な人でも気温が下がると血圧は上がります。季節の変わり目の9・10月ごろから血圧は上昇しはじめ、冬場にピークを迎えます。昼夜の寒暖差が著しくなる11月は、冷え込みで血管が収縮し、急に血圧が高くなりますので、血圧が高めの人は特に注意が必要です。

高血圧については、第4回「塩分と生活習慣病」でも説明していますが、自覚症状はほとんどなく、気づかずに過ごしている場合もあります。

成人の場合の正常血圧は最大血圧130㎜Hg/最小血圧85㎜Hgで、最大血圧140㎜Hg以上/最小血圧90㎜Hg以上を高血圧症としています。高血圧が怖いのは、心臓から身体の各部分へ血液を運ぶ動脈が硬くなる「動脈硬化」を引き起こす危険因子のひとつだからです。高血圧症のほか、脂質異常症、糖尿病、肥満、ストレス、運動不足、喫煙などの危険因子(※1.血管環境をを悪くする要因)が重なれば重なるほど動脈硬化のリスクは高くなり、やがて心疾患、脳血管疾患といった重篤な病気の原因になります。

※1.血管環境を悪くする要因
・脂質異常症があると、内皮細胞の下にコレステロールが溜まりやすくなる。
・糖尿病の場合は、高血糖の影響で内皮細胞が傷つきやすくなる。
・肥満の場合は、皮下脂肪により血管をしめつけ、血圧を上げる(体重1kg増えると4mmHg増える)。蓄積した内臓脂肪から血管に障害をもたらす物質が分泌される。
・喫煙は内皮細胞機能に障害をもたらし、血液をかたまりやすくさせる。

近年、この動脈硬化の早期診断のため「血管検査」が医療機関などで導入されはじめました。高血圧でも脳卒中を起こさない、反対に正常範囲なのに急に脳卒中で倒れる場合があるなどは、血管の状態によるからです。

 

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血管の状態を表すのによく用いられる言葉に「血管年齢」がありますが、これは、血管内皮(後述)の障害、血管のかたさ、厚さの度合いを同年齢、同性の人の平均と比べたもので、血管の老化のバロメーターになります。

現在、血管検査は、全身に脈が伝わる速さ(脈波伝播速度)で血管の機能と動脈のかたさを調べるPWV検査、動脈の拡張度(血管内皮機能)を調べるFMD検査など数種あります。

検査の結果などから、血管年齢が実年齢に加え、10歳未満なら健康な血管、10~20歳なら生活習慣病の疑い、20歳以上なら血管の老化がかなり進んでいる状態であることを示しています。

血管壁は、「外膜」「中膜」「内膜」の3層からなっていて、動脈の外膜は血管の保護、中膜は血圧に合わせて伸縮し、血圧を受け止める役割をしています。「内皮細胞」「平滑筋」「弾性膜」から成る内膜は、血管をしなやかにする物質(→※2)を分泌して、血管の弾性を保ち、血液が固まるのを防ぐほか、脂肪細胞から脂肪分を放出するのを助ける働きなどをしています。

※2
しなやか物質は10種類ほどありますが、重要な働きをしているのは「一酸化窒素」と「「プロスタサイクリン」、「EDHF」です。一酸化窒素はアミノ酸の一種L-アルギニンとL-シトルリンによって産生されますので、含む食品を摂るようにしましょう!
L-アルギニン多く含む食品:赤肉、魚、大豆製品、カカオやピーナツ、アーモンドなどのナッツ類、小麦胚芽
L-シトルリンを多く含む食品:スイカ、キュウリ、メロン、たまねぎ、ニンニク

 

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1)DHAやEPAを多く含む食品:養殖ハマチ、イワシ、サバ、サンマなど青背魚
→血中のLDL(悪玉)コレステロールや中性脂肪を減らし、血液をさらさらにします。

2)大豆たんぱくを含む食品:大豆、大豆製品(豆腐、納豆など)
→LDLコレステロールの酸化を抑え、粥腫(しゅくしゅ)が出来るのを抑えます。

3)水溶性食物繊維を含む食品:海藻、こんにゃく、果物
→LDLコレステロールや糖質の腸からの吸収を妨げ、コレステロールや血糖値の急上昇を抑えます。

4)不溶性食物繊維を含む食品:ごぼう、きのこ、豆類、穀類、野菜、カニ・エビの殻
→食後の急な血糖値上昇を防ぎます。

5)カリウムを含む食品:野菜類、芋類、豆類、果実類、海藻類、魚介類
→摂り過ぎた塩分を排出して高血圧を予防、LDLコレステロールの酸化を防ぎます。

6)マグネシウムを含む食品:魚介類、豆類、海藻類、種実類
→血管が正常に機能するよう、血管の弾性を保つ、血液が詰まらないようにするなどの働きをします。

★血管環境を良くする食事のとり方

・バランスの良い食事を

・よく噛んでゆっくり食べる

・塩分はひかえめに

高血圧について考えると、以上のように高血圧を含む周辺の問題を知っておかなければなりませんが、ここでもう一度普段からできる簡単な予防法は?を考えてみましょう!

 

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和食は健康にとって優れた料理法ですが、塩分だけをみると洋食に比べて多いのに気づかされます。みそ汁、うどん、そばなどの汁物はじめ、肉じゃが、サバの味噌煮、照り焼き、塩焼きなど、高血圧予防の理想的な塩分量1日6g未満を1食分で摂っている場合もあります(現在日本人の塩分摂取量は、平均で1日10~12gです。生活習慣病予防には男性9g、女性7.5gを目標量としています)。

まずは、減塩、薄味をこころがけましょう! そして、カリウムたっぷりの野菜の使い方ももう一度見直してみましょう。

 

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(1)酢を上手に使いましょう

◎穀物酢やかんきつ類、梅などの酸味を生かすと塩分ひかえめでも美味しく感じます。

例)・サバの味噌煮→サバみぞれ煮のゆず風味
・魚の塩焼き→幽庵焼き(柚子汁+しょうゆのたれに浸けて焼く)
→魚の白焼き酢醤油
・肉じゃが→肉とじゃが芋のソテーレモン風味(かんきつ類としょうゆの和風ドレッシングをかける)

◎酢の物は和えずに食すときにかけます。

例)・ちりめんじゃことキュウリの酢の物→酢がけ
・野菜の酢の物→ドレッシングかけ
→塩分ひかえめの梅肉風味

(2)香味野菜、香辛料など塩味以外の味覚で楽しみましょう

七味唐辛子、こしょう、マスタード、カレー粉、胡麻、ナッツなどのほか、生姜、ネギ、ハーブなど香草も用いる。

例)・肉じゃが→肉とじゃが芋のカレー風味煮(きんぴらを作る要領で、先にカレー炒めして、仕上げに砂糖、醤油を用いる)
→調味料をオイスターソースやウスターソースにかえて、薬味のネギを出来上がりに散らす
→薄味の煮物にして、切り胡麻をかけるなどごま風味に

(3)出汁の旨味で充分美味しさは引き立ちます

汁物、煮物などは、カツオ、昆布、チキンなどの出汁をしっかり利かすと美味

(4)新鮮な素材(肉、魚、野菜)を使って、素材の味を引き立てる薄味仕上げにします

例)・煮魚→造り、たたきなど生で食し、調味料は塩・しょう油以外に、わさび、梅、オリーブ油なども添えるなど
→さっと煮にして、煮汁は食さず残すようにします。
・野菜煮物→焼野菜、茹で野菜は、シンプルで素材の味が楽しめ、香ばしさなどが加わると、塩分以外の味(酸味、辛みなど)を求めたりします。

(5)調理の際、水気をしっかり取ってから、味を含ませる

例)ほうれん草のごま和え→茹でたあとにしょうゆをかけ、水分をしっかり取る(しょう油洗い)から胡麻と和える。

(6)料理の出し方(進め方)にも工夫をする

薄味のものから、だんだん濃い味のものを出す方法と、味のしっかりついたものと、淡泊な味のものを交互に出す方法がありますが、家庭では食べる側がこれを意識して、食べてもらえるように促します(子どものときからの習慣付けを)

 

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たっぷりの野菜を摂っていても、茹でる、煮汁を使わないなどの調理法では、水に溶けだしたカリウムが失われます。

(1)生で食べる

(2)切り方を大きくする

(3)皮ごと調理する

(4)炒める、蒸すなどなるだけ水分が出ない調理法で

(5)煮汁ごと食べる(煮汁はあんかけ、ソースにする)。和洋中の汁物料理がベスト

★食材や調味料の塩分(ナトリウム)をチェックしましょう!

調理済み食品の表示を確認するほか、血圧の高い人は、食品成分表を参考にしましょう。
<食品のナトリウム量(mg)×2,54÷1000=塩分g>です。

 

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酢を使った料理と、昆布締めは、素材を変え、いろいろな料理に応用できます。

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・材料(2人分) 1人分の塩分0.6g
りんご1と1/2個、豚ロースしゃぶしゃぶ用80g、セロリー1本、ほうれん草1/4束(50g)、アーモンドスライス大匙1、蜂蜜入りりんご酢大匙1、オリーブ油大匙2、2倍濃縮めんつゆ大匙1、りんご酢大匙1、黒こしょう少々

・作り方

(1)りんごは1個を8つ割にして皮と芯を除き、1切れずつ豚肉を巻いて、温めた(樹脂加工)フライパンに並べて表面を焼き、蜂蜜入りりんご酢、めんつゆを加えたら、焦がさないようにつゆを絡める。

(2)半分のりんごは4等分して芯を除き、薄切りにして(分量外)りんご酢水に浸ける。

(3)セロリーは筋を取って斜め薄切りにして水に放ち、ほうれん草は葉のみを食べやすく手でちぎって加え、ざるに上げ水分をとる。

(4)(2)(3)を合わせて<オリーブ油+りんご酢+こしょうで作った>ドレッシングをかけ、煎ったアーモンドを上に散らす。

(5)リンゴグラッセとサラダを盛り合せて供する。

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・材料(2人分) 1人分の塩分1.4g
ブリ切り身2切れ(80g)酒大匙1、りんご酢大匙1、2倍濃縮めんつゆ大匙1と1/2、しめじ1パック、まいたけ1パック、サツマイモ100g、オリーブ油大匙1/2、塩小さじ1/6、大根おろし大匙4、ピクルス適宜、一味少々

・作り方

(1)ブリに酒を振りかけてしばらく置き、温めたフライパンで両面を軽く焼いて、リンゴ酢、めんつゆ各大匙1を加えて中まで火を通し、最後に残り大匙1/2のめんつゆをかける。

(2)しめじ、まいたけは石づきを取り除いて、手でほぐしておく。サツマイモは皮をむいて、長さ5㎝の7~8㎜の棒状に切り、オリーブ油を入れたフライパンで炒め、シメジ、まいたけを加えてさらに炒める。

(3)焼きブリに粉山椒か一味、キノコソテーには塩少々を上にふり、おろし大根、ピクルスなどを添えてすすめる(塩や香辛料は混ぜ合わさないことで、味をよく感じる)。

●昆布締めは、白身魚のほか新鮮なアジ、いわしなどを素材にし、細造りにして生野菜とあわせ、カボスやすだちを絞っていただきます。

 

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nutrituion.ueda.image 京都生まれ、京都育ち。
病院・保健所・役所などに勤務後、雑誌の企画・編集・執筆に携わる。やがて、伝統ある町の魅力を全国に伝えるかたわら、食の専門家としても活動を開始。料理本の企画・執筆、栄養指導を経て、やがて京都のおばんざい教室『よろしゅうおあがり』を立ち上げる。こうした経験をいかし、現在も医療の現場や企業での栄養管理・指導にまで活躍の場を広げ、今もさまざまな料理レシピを生みだし続けている。

 

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