病気にならない「予防栄養学」講座

第3回 脂質と脂肪酸

nutrituion.03-01

nutrituion.checkpoint

POINT1 脂肪は、皮膚を保護し、ビタミンの吸収を助け、代謝をコントロールする重要なもの。

POINT2 脂質は摂り過ぎや不足だけでなく、バランスにも注意!

POINT3 コレステロールの摂り過ぎが、病気の引き金に!?

 

nutrituion.03-02

 

nutrituion.03-04

たんぱく質や糖質と併せて私たちのエネルギー源となる脂質。実際に動植物に含まれる食べ物の栄養素(物質)は「脂肪」といいますが、栄養学的には「脂質」「脂肪」「油脂」はあまり明確に区別されていません。
脂肪は一般的に、肥満や脂質異常症の原因であって控えた方がいいと思われがちですが、実は私たちの身体に必要な栄養素なのです。脂質は身体の中でエネルギー源になったり、皮膚を保護したり、ビタミンの吸収を助けたり、代謝をコントロールするホルモンとしてなど重要な働きをしています。また、脂質には旨味があって、味覚、舌触りなどにも影響を及ぼしたり、風味に変化をもたらしたりといった働きもあります。

食べ物から摂った脂肪は、胃の中で多少は乳化され、大半は十二指腸で膵液、腸液で中和され、胆汁からの消化酵素リパーゼによって分解され、小腸で吸収されてリンパ管に流れていきます。
糖質、たんぱく質に比べて、酸素が少なく体内で酸化されやすいのですが、その分エネルギー源としての効率がよく1gで9kcalの熱量を出します。また、余った脂肪は脂肪細胞に蓄えられ、必要に応じてエネルギー源として使われます。

 

nutrituion.03-03

□脂肪組織(皮下脂肪、内臓脂肪)・肝細胞・・・・中性脂肪

□血液・リンパ液・・・・中性脂肪、リン脂質、コレステロール、遊離脂肪酸

□細胞膜・脳神経細胞・・・・リン脂質、糖脂質、コレステロール

中性脂肪(脂肪)は、グリセリンと脂肪酸から構成されていて、その構成成分である「脂肪酸」の種類により、体内での働きも異なります。

nutrituion.03-05

nutrituion.03-06

 

nutrituion.03-07

nutrituion.03-08

分類 おもな脂肪酸 多く含む食品 働き
飽和脂肪酸 パルミチン酸ステアリン酸ミリスチン酸ラウリン酸 パーム油、やし油、豚脂(ラード)、牛油(ヘット)、バターなど ・血液中の中性脂肪やコレステロールを増やす
不飽和

一価不飽和脂肪酸 オイレン酸 オリーブ油、菜種油(キャノーラ油)、種実、調合サラダ油 ・血液中のコレステロールを低下させる・胃酸の分泌を調整
多価不

n❘6系

リノール酸 紅花油(サフラワー油)、ひまわり油、綿実油、大豆油、コーン油、ごま油、くるみなど ・血液中のコレステロールを低下させる・動脈硬化を予防・とり過ぎると動脈硬化、アレルギー、高血圧などを招く
y-リノレン酸 月見草油、母乳 ・血糖値、血液中のコレステロールを低下・血圧低下
アラキドン酸 レバー、卵白、サザエ、伊勢エビ、アワビ ・血圧を調整・免疫系の調整・過剰にとると動脈硬化、アレルギー性湿疹などを発症させる
n❘3系

α-リノレン酸 しそ油、えごま油、亜麻仁(あまに)油、しそ、えごまなど ・アレルギー性疾患を予防・高血圧、心疾患、がんを予防
DHA(ドコサヘキサエン酸) ホンマグロ脂身、養殖マダイ、ブリ、サバ、養殖ハマチ、ウナギ、サンマ、サワラ ・中性脂肪を低下させる・高脂血症、高血圧、脳卒中、虚血性心疾患、痴呆を予防
EPA(エイコサペンタエン酸) 養殖ハマチ、マイワシ、ホンマグロ脂身、サバ、養殖マダイ、ブリ、ウナギ、サンマ ・抗血栓作用・中性脂肪を低下させる・脳血管障害、虚血性心疾患、高血圧、動脈硬化、高脂血症、皮膚炎を予防

※必須脂肪酸
成長や生体機能を維持するために必要な脂肪酸ですが、体内では合成できないリノール酸、α-リノレン酸、アラキドン酸は、食べ物から摂取せねばならず、必須脂肪酸と呼ばれます。

おもな脂肪酸は上記の表のとおりに分類されますが、ひとつの食品には、いろいろな脂肪酸が含まれています(「日本食品標準成分表 脂肪酸成分表編」参照)。

 

nutrituion.03-09

オレイン酸 善玉コレステロールを減らさず、総コレステロールを下げる働きがありますので、動脈硬化を予防します。オリーブ油に多く含まれ、加熱しても酸化しにくくので、炒め物やドレッシングに用いるといいでしょう。
リノール酸 サフラワー(紅花)油、綿実油、コーン油、大豆油などに多く含まれていて、その風味や油の特性から、生食・加熱調理など用途に合わせて使い分ける。また、過剰症のリスクを減らすためには、n-3系油脂と混ぜ合わせた調合油を用いるといいでしょう。
α-リノレン酸 畑のDHA・EPAといわれるように、体内に取り入れられると、代謝されてDHA・EPAに変換されます。熱に弱く、酸化しやすいので生食がおすすめです。シソ油、エゴマ油、アマニ油などに多く含まれています。
アラキドン酸 細胞膜中のリン脂質として存在し、脳に多く含まれます。リノール酸を原料に体内でつくることができるので、不足は問題になりにくいのですが、高齢になるとつくられる量が低下し、物忘れなどが起こるといわれ、脳との関係で注目されています。肉類(レバー)、卵などに多く含まれますので、高齢になっても魚類とともに肉類もバランスよく食べましょう。
DHA(ドコサヘキサエン酸) 脳の栄養素といわれるように、脳の情報伝達を行なう神経細胞に含まれていて、脳の発育や機能維持に重要な働きをしています。また、視神経との関わりも深く、目の機能回復にも効果的だといわれています。まぐろ、さばなどに多く含まれますが、酸化しやすいので、鮮度のよいものを選ぶこと。また、油脂に含まれるので、脂を落とし過ぎない料理(生食、焼き魚より煮魚など)がおすすめです。 体内ではDHA,EPAはα-リノレン酸から合成されます。
EPA(エイコサペンタエン酸) 血液をサラサラにして、血栓症を予防します。DHAと合わせて1日1g以上摂ることが望ましいとされています。筋子、イクラ、まいわしなどに多く含まれています。

 

nutrituion.03-10

nutrituion.03-11

コレステロールとは身体を構成する60兆もの細胞の表面にある細胞膜の成分でこれも脂質の一種。性ホルモンや副腎皮質ホルモンや胆汁の主な成分胆汁酸などの原料にもなる重要なものです。食べ物から得られたコレステロールは血液によって体内の細胞に運ばれ利用されますが、脂質はそのままでは血液に溶け込めません(油脂は水に溶けない)。そこで、リン脂質やたんぱく質とともに親水性の「リポたんぱく質」を構成し、血液の中に存在するのです。

nutrituion.03-12

□ LDL…
コレステロールを肝臓から抹消組織へ運ぶ働きをしています。
血中に増えすぎると動脈硬化を発症しやすくなるので、「悪玉コレステロール」と呼ばれます。
□ HDL…
全身の細胞で余ったコレステロールを血管から回収して、再び肝臓に運ぶ働きをして、動脈硬化を防ぐので、
「善玉コレステロール」と呼ばれます。
□ VLDL…
肝臓で合成された中性脂肪やコレステロールを組織に運ぶ働きをします。
□ カイロミクロン…
中性脂肪を脂肪組織に運ぶ働きをします。

身体に必要なコレステロールの約80%は体内で合成されます。食事からの摂取が多い場合には体内での合成は調整されますが、身体を動かさずにコレステロールを多く含む食品や動物性脂肪を多く含む食品を摂りすぎると、血液中のLDLが増えすぎます。
コレステロール1日の摂取基準は、18歳以上男性が750mg未満、18歳以上女性は600mg未満に設定されています。因みにコレステロールを多く含む食品は、レバー、鶏卵、イカ、鰻などです。
血液中のコレステロールなど脂質のバランスは、動脈硬化と深く関わっています。そして、血管が硬くなったり、脆くなったりした状態が続くと、「心筋梗塞」「脳梗塞」など命に関わる病気を引き起こします。

 

nutrituion.03-13

脂肪酸を摂るには、飽和脂肪酸3:一価不飽和脂肪酸4:多価不飽和脂肪酸3(n-6系脂肪酸4:n-3系脂肪酸1)が望ましいとされています。
調理の際には植物油を選び、魚料理を取り入れることでバランスのよい食事に近づきます。

 

nutrituion.03-14

  1. 不飽和脂肪酸や食物繊維を多く含む食品を摂りましょう。
    腸内で消化できない食物繊維は、野菜やきのこ、海藻類などに多く含まれ、コレステロールを減らすのに役立ちます。
  2. 飽和脂肪酸やコレステロールを多く含む食品は適量を考えて摂りましょう。
  3. 中性脂肪を増やす食品も摂り過ぎないように注意しましょう。

nutrituion.03-15

調理にはオリーブ油、サラダ油(なたね油、大豆油)などを用い、1日1食は主菜を魚料理(アジ、マイワシ、サバ、サンマ、養殖マグロ、養殖真鯛、養殖ハマチ、鰆など)を心がけましょう。

nutrituion.03-16

nutrituion.03-17

nutrituion.03-18

nutrituion.03-19

nutrituion.03-20

飽和:一価不飽和:多価=3:4:3の割合は、1日の脂肪酸全体の40%を一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)にすると、健康が維持できることがわかります。

 

nutrituion.03-21

nutrituion.03-22内臓脂肪は過剰になると、血液中に中性脂肪として存在し、また、脂肪細胞から分泌される身体の働きに必要な様々な化学物質(生理活性物質)のバランスが崩れて動脈硬化がおこりやすくなります。

◯脂質異常症(高脂血症)とは

●LDLコレステロールと動脈硬化の関係

LDLが増えすぎると、血管壁に入り込んで酸化され、酸化型のLDLに変わり、壁にたまって動脈硬化が進行します。

●中性脂肪と動脈硬化の関係

中性脂肪は血管壁に入り込んでたまるということはありませんが、中性脂肪を多く含むVLDLが増え、HDLが減ってしまいます。すると余分なコレステロールが回収されず血管に残されたままになり、動脈硬化がさらに進行するのです。

nutrituion.03-23

睡眠時間を減らして日中と同じように活動すると、エネルギーが消費されて痩せるような気がするのですが、逆に太りやすいことが分かり、その後、世界の研究者により実証されています。睡眠不足により、脂肪細胞から出る満腹を伝えるホルモン・レプチンが減り、胃からは食欲を刺激するホルモン・グレリンが多く分泌され、肥満に繋がることが明らかになったのです。夜中に食べているわけではなく、身体のホルモンバランスが崩れ、いくら食べても満腹にならないのですね。また、血糖値を下げるホルモン・インスリンの効きが悪くなるなど糖尿病との関係も研究されています。

 

nutrituion.ueda.name

nutrituion.ueda.image 京都生まれ、京都育ち。
病院・保健所・役所などに勤務後、雑誌の企画・編集・執筆に携わる。やがて、伝統ある町の魅力を全国に伝えるかたわら、食の専門家としても活動を開始。料理本の企画・執筆、栄養指導を経て、やがて京都のおばんざい教室『よろしゅうおあがり』を立ち上げる。こうした経験をいかし、現在も医療の現場や企業での栄養管理・指導にまで活躍の場を広げ、今もさまざまな料理レシピを生みだし続けている。

 

nutrituion.content

このページの先頭へ