病気にならない「予防栄養学」講座

第4回 塩分と生活習慣病

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POINT1 塩(塩化ナトリウム)の摂取基準は食塩相当量 男性9.0g未満 女性7.5g未満

POINT2 塩分を上摂りすぎない秘訣は、食べる時間とカリウム摂取にあり

POINT3 高血圧を放置すると脳卒中、狭心症、心筋梗塞、腎不全などの症状が起きることも。

 

食事の味付けに不可欠な塩分、すなわち塩とは、必須ミネラルのナトリウム(Na)と塩素(Cl)がくっついた「塩化ナトリウム(NaCl)」のことをいいます。
ナトリウムは食塩として摂る場合が多いのですが、食品中にも含まれていて『食品成分表』ではナトリウムのほか、食塩に換算して「食塩相当量」として表されていますね。

食塩相当量(g)=ナトリウム(g)×2.54

近年では塩分は高血圧症などの、生活習慣病との関わりばかりが取り沙汰されますが、食塩はおいしさの基本となる調味料で、食欲を高めたり、消化吸収に関係する大切な栄養素です。
糖質やたんぱく質の消化酵素を活性化し、ナトリウムは消化物を腸管から吸収するのを促進する、身体になくてはならない成分なのです。

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分類 効果 不足 摂り過ぎ 含まれる食品





カルシウム 精神安定/骨を丈夫にする/骨粗しょう症を防ぐ/高血圧・動脈硬化予防/筋肉の働きを良くする 骨粗しょう症/肩こり・腰痛/イライラ/高血圧・動脈硬化/歯・あごの発達不良 高カルシウム血症 小魚類/脱脂粉乳/チーズ
リン 丈夫な歯を作る/骨の強化/成長促進 骨が弱くなる 骨が弱くなる/腎機能障害 卵黄/肉類/魚類/小魚類/はいが/ぬか/チーズ
カリウム むくみを解消/筋肉を正常に保つ/取り過ぎた塩分を排せつ/高血圧予防 むくみ/高血圧/筋肉のけいれん とくになし 野菜類/いも類/豆類/種子類/藻類/果実類/魚介類/肉類
ナトリウム 神経と筋肉の鎮静/排泄促進 排せつ障害 むくみ/高血圧/動脈硬化/胃がん 食塩/みそ/しょうゆ/佃煮/ハム
マグネシウム 血圧の維持/歯を丈夫にする/体温の維持/筋肉の働きを良くする/骨を丈夫にする 不整脈/高血圧/動脈硬化 下痢 小麦胚芽/ふ/えんどう/穀類/ほうれんそう/肉類





造血作用/成長促進/全身の機能を高める めまい/鉄欠乏性貧血/成長不良 鉄沈着症/鉄中毒 肝臓/卵/糖みつ/きなこ/煮干し/のり/かき/ゆば
ヨウ素 甲状腺ホルモン合成/成長促進/エネルギー生産 甲状腺障害/成長障害 甲状腺腫 藻類/海産物類
亜鉛 味覚を正常に保つ/生殖機能向上/脱毛予防/新陳代謝向上 味覚障害/精子減退/成長不良 急性亜鉛中毒 魚介類/肉類/玄米/豆類/種子類/チーズ
造血作用/骨の強化/血管壁強化/髪や皮膚を正常に保つ 鉄欠乏性貧血/毛髪異常/発達障害 とくになし 肝臓(牛)/ココア/チョコレート
マンガン 抗酸化作用/骨を丈夫にする/エネルギー供給 骨の成長障害/生殖器能障害 とくになし 種子類/玄米/のり/しょうが
セレン 抗酸化作用/抗ガン作用 カラダの老化が進む 脱毛/嘔吐・下痢 魚介類/動物の内臓/卵類/穀類/肉類/乳製品
クロム 糖尿病予防/高血圧予防 糖質、脂質の代謝低下 嘔吐・下痢 肉類/全穀物製品(製粉により消失あり)
モリブデン 尿酸代謝/鉄欠乏性貧血予防 鉄欠乏性貧血/尿酸代謝障害 関節の痛み 豆類/緑葉類/バナナ

 

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ナトリウムは体内に体重の約0.15%存在し、多くは細胞外の体液に含まれていて、水分とともに細胞外液や血液循環をコントロールしたり、神経の刺激伝達などにも関わっています。もちろん、細胞内にも含まれていますが、細胞内の多くはカリウム(K)が占めています。細胞内外ではナトリウムとカリウムのバランスが一定に保たれていて(ナトリウム-カリウムイオンポンプの働きによる)、細胞内にナトリウムが増えると外に出され、細胞外のカリウムを中に取り込みます。このように細胞外液の浸透圧を維持しているのがナトリウムです。また、細胞内にナトリウムが入り込むときには、他の物質(例えばグルコース)を一緒に取り込むなど、糖の吸収にも重要で、骨の構成要素として骨格の維持にも貢献しています。

 

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ナトリウムは主に食塩として食事から摂取しますが、摂りすぎると、細胞内外の出入りがスムーズに運ばず、細胞内にナトリウムが増えてしまいます。この時に水分も一緒に入るので細胞内は水ぶくれ状態で、むくみ(浮腫)を生じるのです。また、膨張した細胞により血管が狭くなると、血管壁にかかる圧力が上がります。さらにナトリウムは血管を収縮させる作用もあり、血圧が上昇するのです。
血管が収縮し短気になることを、昔から頭に血がのぼる、と言いい、近年の「キレる」はここからきているのですね。そのほか、胃がんや骨粗しょう症、尿路結石などさまざまな疾患の危険因子になることもわかってきました。

味噌、醤油など塩分の多い調味料を多く使う日本の食事では、ナトリウムが不足することはありませんが、高温の中で仕事を続け多量に汗をかいたり、激しい下痢や利尿剤の使用で多量にナトリウムが排泄された場合には、倦怠感や食欲不振などがみられます。

 

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ナトリウムには食事摂取基準の目安量は策定されていません。
ミネラルの食事摂取基準・・・・クリックしてご覧になれます。

成人のナトリウム1日推定必要量は600mg(食塩相当量1.5g)で、不足することがないので、摂り過ぎに重点をおき、食塩相当量<目標量>男性9.0g未満 女性7.5g未満としています。

食塩は皆さんも知っている通り、私たちの食に深くかかわっています。
加工食品は保存性を高めるために塩分が多く使われるのですが、それ以外にも塩蔵過程で食品特有の発酵がおこり、独特の旨味や香りの食品や嗜好品となるものもあるのです。
(酒盗、ブルーチーズ、キャビア、辛子明太子、カラスミ、くさや、イカの塩辛、梅干し、奈良漬け、紅生姜、その他漬物など)

※即席中華めん、カップめんなどは、塩分が多いことに気づきますが、見逃しがちなのは、インスタントだしや調味料です。
表示を確認して使用量を工夫しましょう。
※外食のメニューやテイクアウト弁当、市販の惣菜なども、一般的には塩分、糖分の多い濃い味付けになっています。
偏った食事にならないよう注意しましょう。

 

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スーパーなどで塩の原材料名を見ると精製塩や自然塩などがあります。この違いはどういったものなのでしょう。精製塩は純度が高く、ほとんどがナトリウムと塩素でできていますが、自然塩にはカリウム、マグネシウム、リンなどのミネラルが豊富に含まれています。カリウムはナトリウムの排泄を促し、血圧を下げる作用があります。

 

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『時間栄養学』(日本栄養・食糧学会監修)で広く知られるようになった、食事時間と栄養素の代謝についてで、「体には体内時計が備わっていて、食べる時間によって吸収や排泄に違いがあり、同じカロリーなら朝に食べるより夜の方が太りやすく、食後の血糖値も高くなりがちである」ことから、夕食は控えめにと指導されるようになりました。
この中で、「食塩の時間栄養学」も発表されていて、「同じ塩分を摂った場合、朝・昼と夜を比較すると夜は排泄が多い傾向が見られた」ということでした。
副腎皮質ホルモンのアルドステロン(腎臓の尿細管でナトリウムの再吸収とカリウムの排出を促進)の分泌が高く食塩が排泄されにくい朝と昼に塩分制限をして、低くなる夕方は塩分制限を緩めるという指導もできるのでは、と今後の研究に期待が寄せられています。

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細胞膜の内外でナトリウムと作用し合っている「カリウム」のことはすでに説明しましたが、高血圧を防ぐ大切なミネラルです。もう少し学んでみましょう。
●カリウムは体内に体重の約0.2%存在し、その多くは細胞内に含まれています。ナトリウムは細胞外、カリウムは細胞内において一定の濃度を保ち、細胞の浸透圧を維持しています。また、細胞内の酵素反応を調節する働きがあり、筋肉のエネルギー代謝や神経伝達、筋肉の収縮を補助する作用があるといわれています。
カリウムには、ナトリウムが腎臓で再吸収されるのを防ぎ、尿への排泄を促す働きがあることから、血圧を下げる効果があり、高血圧予防に役立ちます。
また、手足のむくみ解消にも効果的です。

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体内に十分なカリウムがない場合は、余分なナトリウムの排泄ができず、高血圧を引き起こしやすくなります。大量の汗をかくと、カリウムが汗とともに出て、低カリウム血症がおこり疲れやすくなります。
カリウムは通常尿中に排泄されるので、過剰症になることはありませんが、カリウムが過剰に体内に存在し、尿の排泄が困難な場合は、高カリウム血症を起こすことがあります。

カリウムの食事摂取基準は、高血圧を中心とした生活習慣病の一次予防のために目安量は設定されています。
ミネラルの食事摂取基準・・・・クリックしてご覧になれます。
1日 成人男性2500mg 成人女性2000mg
 ナトリウムとカリウムの摂取比率は、ナトリウム2以下:カリウム1が望ましい

 

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nutrituion.04-26鰆、納豆、ほうれんそう、モロヘイヤ、小松菜、芽キャベツ、そら豆、里芋、山芋、さつま芋、アボガド、バナナ、柿、キウイ、海藻類など
海藻に含まれるアルギン酸(食物繊維)は、カリウムと一体になっていて、胃に分解され吸収ののち小腸でナトリウムとくっついて、そのまま体外に排泄します。つまりわかめ、昆布、ひじきなどを食すると、血圧が下がると言われていたのは本当だったのです。

 

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nutrituion.04-20心臓は毎分4~5リットルもの血液を全身に送り続けています。血圧とは、この血液の流れによって動脈壁にかかる圧力のことで、心臓が収縮して血液が全身に送り出されるときの圧力を「収縮期圧力」一般に最大血圧、心臓が拡張して血液が心臓に戻ってくるときの圧力を「拡張期圧力」最小血圧といいます。
成人の場合正常血圧は、最大血圧130mmHg未満、最小血圧85mmHg未満で、最大血圧140mmHg以上、最小血圧90mmHg以上の場合は高血圧症と診断されます。

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血圧を調整しているのは「自立神経」で、「交感神経」と「副交感神経」から成っています。活動時は、心臓が充分な量の血液を送り、酸素や栄養分を全身に供給する必要があるので交感神経が働き、心拍数が増えて血圧が上昇します。朝、目が覚める前後に血圧が上がり、身体は活動のリズムに入ります。夜は副交感神経が働き、就寝とともに心拍数が減って血圧が下がります。
また、緊張や興奮によるストレスは自立神経を刺激して、副腎からホルモン(アドレナリン)が分泌され、動脈を収縮させ、血圧が上がります。

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高血圧になると、頭痛やめまい、肩こり、耳鳴りなどが起こることもありますが、ほとんど自覚症状はありません。ただし、こうした状態が長く続くと、全身の血管の動脈硬化が進み、脳卒中、狭心症、心筋梗塞、腎不全などを引き起こす要因となります。また最近の研究では、認知機能障害の原因になるともいわれています。
高血圧の原因としては、ひとつに腎臓や心臓の病気などが挙げられますが、高血圧の90%以上は、原因が明らかでない本態性高血圧です。しかし、遺伝的体質に食塩摂取過剰、肥満、アルコールの多飲、喫煙、ストレス、運動不足など悪い生活習慣が重なることによって起こるとみられています。

 

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高血圧の原因のひとつは塩分の摂り過ぎと言われてきましたが、そのメカニズムを遺伝子レベルで解明した研究が2011年に東大医学部から発表されました。
「塩分の摂り過ぎで、交感神経活性が異常になり、塩分排泄に関わる遺伝子の転写活性が抑制される」と述べられています。
また、塩分に対する血圧の変化は人によって異なり、少し摂り過ぎただけで高血圧になりやすい(塩分感受性の高い)人とそうでない人がいることも知られています。本態性高血圧の患者ではその40%がこの塩分感受性高血圧で、日本人は欧米人に比べ塩分感受性が高い人が多いといわれています。

 

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ナトリウム、カリウムのところでも学びましたが、高血圧対策の第一歩は塩分を控えること。減塩には、動脈の柔軟性が高める、腎機能を守る、ナトリウム排泄に使われるカリウムが失われるのを防ぐなどの利点があります。また、野菜、果物、海藻、イモ類から、カリウムを多く摂ることも大切。
直截な食事以外では、適正体重を維持し、肥満を解消すること、有酸素運動で、カテコラミンなど昇圧因子を減らし、タウリンなど降圧因子をふやすことも重要なポイントです。
以下に、食塩摂取の目標となる数値を掲載していますので、今日からさっそく減塩を始めてみては?

【塩分約1gに相当する調味料】

調味料 目安 分量
食塩 1g 小さじ(5?)1/6
濃口しょうゆ 7g 小さじ1強
赤味噌 8g 小さじ1と1/3
白味噌 16g 小さじ2と2/3
ウスターソース 12g 小さじ2
中濃・特濃ソース 18g 小さじ3

【加工食品の塩分】

調味料 目安 分量
たらこ 2g 1/2腹
ソーセージ 約1g 3本
ベーコン 約0.8g 2枚(40g)
かまぼこ 約1g 2切れ

 

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nutrituion.ueda.image 京都生まれ、京都育ち。
病院・保健所・役所などに勤務後、雑誌の企画・編集・執筆に携わる。やがて、伝統ある町の魅力を全国に伝えるかたわら、食の専門家としても活動を開始。料理本の企画・執筆、栄養指導を経て、やがて京都のおばんざい教室『よろしゅうおあがり』を立ち上げる。こうした経験をいかし、現在も医療の現場や企業での栄養管理・指導にまで活躍の場を広げ、今もさまざまな料理レシピを生みだし続けている。

 

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