病気にならない「予防栄養学」講座

第5回 糖質と炭水化物

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POINT1 炭水化物の摂取目安は男性345g、女性263g。

POINT2 糖質の種類は単糖類、少糖類、多糖類の3つ。食物繊維も糖質のひとつ。

POINT3 糖尿病の予防は食事バランスと運動、なによりも今の自分を把握することから。

 

糖質はたんぱく質、脂質と並ぶ三大栄養素のひとつです。体内の消化酵素で消化される「糖質」と消化されない「食物繊維」を合わせて炭水化物といいます。
食べ物から摂った糖質の多くは、消化・吸収された後、ブドウ糖に分解され、血液を通して各細胞に運ばれ、1gで4kcalのエネルギーとして利用されます。また、糖たんぱく質、糖脂質、核酸など身体の構成成分としても重要です。

 

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炭水化物は総エネルギーの50~70%、そして食物繊維は18歳以上男性19g/日以上、女性17g/日以上と目標量を設定しています。しかし、食物繊維は最近の国民健康・栄養調査の結果をみると、男性13~18g/日、女性12~16g/日と目標量に達していません。そこで、エネルギー摂取量に相応した摂取量男性8g/1000kcal、女性9g/1000kcalを望ましいとしています。

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分類 種類 特徴 主な食品
単糖類 ブドウ糖(グルコース) 脳や身体のエネルギー源になる。血糖値を保つ。 米、パン、麺類、ブドウ、バナナ、芋類、ごぼう
果糖(フルクトース) 最も小さな単糖で、吸収がすばやくエネルギーに変わる。 ブドウ、バナナ、リンゴ、蜂蜜
ガラクトース 乳児の脳や体組織に必要で、成長を促進する。 母乳、牛乳、ヨーグルト、納豆
小糖類 二糖類 ショ糖 (スクロース) (ブドウ糖+果糖)さとうの主成分。 さとう、サトウキビ、テンサイ
二糖類 麦芽糖(マルクトース) (ブドウ糖+ブドウ糖)甘みは強くないが旨みがある。デンプンが分解する時に生じる。 水あめ、麦芽、さつま芋
二糖類 乳糖 (ラクトース) (ブドウ糖+ガラクトース)乳汁のみに含まれる。小腸でラクターゼという消化酵素により分解され吸収される。 母乳、牛乳、ヨーグルト、チーズ
オリゴ糖 腸内の善玉菌を増やして、腸内環境を整える。コレステロールを吸収して排泄する。血糖値を正常にする。 フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖などの人工甘味料
多糖類 デンプン 多数のブドウ糖が結合した植物性の貯蔵多糖類。甘みはない。 穀類、芋類、豆類
グリコーゲン 多数のブドウ糖が結合した動物性の貯蔵多糖類。肝臓と筋肉で作られ貯蔵される。甘みはない。 貝類、海老、レバー

なかでも、健康との関わりなど気になる糖をもう少し詳しくみてみましょう。

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□ブドウ糖
脳にとってブドウ糖は唯一のエネルギー源です。ほかにも赤血球、神経系統、腎臓の一部もブドウ糖だけをエネルギー源としています。
脳の重さは成人男性で1300~1400g程度ですが、脳が使うエネルギー消費量は身体全体の18~20%で、1日に脳が消費するブドウ糖は成人男性なら約120gが必要といわれています。

脳はブドウ糖を貯蔵することができませんから、必要なブドウ糖は血液から供給しなければなりません。健康な人の血液中には、血液1ℓ中におおよそ1gのブドウ糖が含まれています。
これを㎗の単位で換算すると、100mg/㎗になります。これが血糖で、一定の濃度を保っています。
ご飯やパンなど炭水化物を食べて30分ほど経過すると、血液中のブドウ糖の量(血糖値)は上昇し、脳に送られます。ここで余ったブドウ糖は、肝臓や筋肉の中でグリコーゲンという物質に変えられたり、脂肪細胞の中で中性脂肪という形で蓄えられます。そして、食物を摂っていないときや、運動など筋肉にエネルギーが必要なときに、蓄えているグリコーゲンや中性脂肪を分解して再びブドウ糖につくりかえ、血液中に供給しているのです。
これは肥満との関係を示す実験データーですが、
朝食に米飯などの糖質を摂ると、心身が朝から活性化し、1日のエネルギー発生量も増えることが知られています。また、朝食を欠食すると、血糖値が下がるので、脳にブドウ糖を送るため筋肉を取り壊す糖新生反応(エネルギー源である糖質が欠乏した場合に、他の栄養素から糖質を作り出す反応)が起こります。
ほかにも、朝食欠食により血糖値が低下することから、かえって昼夜に食欲が増し、急激に血糖値を上げます。そして、これを脂肪に変える「インスリン」というホルモン物質が過剰に分泌され、肥満を起こす要因となるのです。

□オリゴ糖
もとはギリシャ語の「少ない」を意味し、天然のものはショ糖、乳糖、トレハロース、麦芽糖などの二糖類で、三糖類より多くの糖が結合しているものは少ないのです。しかし現在は、さまざまなオリゴ糖が作られ、厚生労働省が「特定保健用食品」として認めたものもあります。

フラクトオリゴ糖 新鮮なタマネギ、ゴボウなどの野菜に含まれる糖分
ガラクトオリゴ糖 母乳などに含まれる糖分
大豆オリゴ糖 大豆、味噌、しょうゆなどに含まれる糖分
イソマルトオリゴ糖 日本酒、味噌、しょうゆなどに含まれる糖分

オリゴ糖はそれぞれ特徴があるのですが、一般的には次のような働きがあります。
・腸内でビフィズス菌の栄養源となり、菌を増殖し腸内環境を整えます。
(腸内の余分なコレステロールや胆汁酸を吸収して排泄し、大腸がんや動脈硬化予防)
・虫歯の原因であるミュータンス菌の栄養にならず、虫歯予防に役立ちます。
・血糖値を正常にする作用もあり、ほとんど糖を吸収しないため、糖尿病の人も使えます。
・カルシウムやミネラルの吸収を促進します。

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脂肪に合成されて脂肪組織に運ばれ、体脂肪として蓄えられ、肥満になりやすい。

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身体を作っている体たんぱく質や体脂肪を分解して、エネルギーにします(糖新生)。

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補酵素として、ビタミンB1が必要です。B1が不足すると、糖質の代謝がうまくいかなくなり、乳酸やピルビン酸などの疲労物質が身体にたまります。
<B1を多く含む食品>を一緒に摂りましょう!
玄米、胚芽米、全粒粉パン、そば、豚ヒレ、豚もも肉、大豆、種実

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人の消化酵素では消化できない食物に含まれる成分で、その多くは植物や海藻類、キノコ類の細胞壁を構成しています。以前は不消化で役に立たないものとされていましたが、近年、有用性がわかってきたため、食事摂取基準目標量が示されるようになりました。
食物繊維は、大きく水溶性食物繊維と不溶性食物繊維とに分けられます。
水溶性食物繊維は、胃の中で食物の水分を吸収し粘性の高い液状になり、糖質を包んで吸収を遅らせます。その結果、食後の血糖値の上昇が緩やかになります。また、コレステロールを原料として作られる胆汁酸が、食物繊維と結びつき、再吸収されずに排泄されてしまうので、新しく胆汁酸をつくるために、コレステロールが減少させ、動脈硬化の予防に役立ちます。
一方、不溶性食物繊維は、水には溶けないのですが、水分を吸収して数倍から数十倍にも嵩をふやし、大腸の働きを活発にして排便を促しますので、腸内環境が整い、生活習慣病の予防にも役立ちます。

なかでもよく耳にする食物繊維を詳しくみていきましょう。

□フコイダン
昆布,ワカメ、もずくなど褐藻類の粘質物に含まれた食物繊維。昆布を原料にしたフコイダンは人間の悪性リンパ腫の細胞にアポトーシス(細胞の自殺)をおこさせることがわかり、癌に効果があるといわれる。また、血中コレステロールを低下させるという研究報告もあります。

□コンドロイチン硫酸
人間の体内でたんぱく質と結びついて皮膚や血管壁、軟骨、靭帯、関節、眼球、角膜、粘液などに存在しています。栄養吸収や新陳代謝を促進するなどの働きがあります。

□キチン・キトサン
カニの甲羅やエビの殻に存在する多糖類のひとつです。胆汁酸と結合し排出するため、不足する胆汁酸の生成に血液中のコレステロールが使われ、コレステロール値が下がります。ほかにも人工皮膚の原料として使われるなど多くの効果が期待されています。

□ペクチン
果物に含まれる食物繊維で、不溶性と水溶性とがあります。未熟な間は不溶性で熟すと水溶性になります。水溶性ペクチンは血糖値の急な上昇を抑え、コレステロールの吸収を妨げる作用があります。不溶性ペクチンは腸内有害物を吸収して排泄する働きがあるとされています。

□グルカン
キノコ類に含まれるのはβ-グルカンで、昔から抗癌作用がるといわれています。

□リグニン
木材中の20~30%を占めることから「木質素」と呼ばれています。胆汁酸を吸収する作用があり、コレステロールを調整する働きがあります。

分類 効用 多く含む食物
水溶性食物繊維 ペクチン ・血糖値抑制
・コレステロールの調整・有害物質を排泄
オクラ、みかん、ダイコン、リンゴ、柿
フコダイン ・抗ガン作用・血圧抑制・コレステロールの調整

・抗アレルギー作用

昆布、わかめ、もずく、めかぶ
グルコマンナン ・胃腸での消化、吸収を低下させる こんにゃく(グルコマンナンを添加した)ダイエット食品、菓子、飲料
アルギン酸 ・高血圧予防・コレステロール調整・血糖値抑制 昆布、わかめ、もずく、ひじき
ポリデキストロース ・コレステロールの調整・高血圧予防・血糖値抑制

・排便促進

食物繊維入り飲料(ポリデキストロースを添加した)ビスケット、キャンディーなどの加工食品
コンドロイチン硫酸 ・目の角膜、水晶体の弾力性などを保つ・関節、靭帯の円滑性を保つ・肌をみずみずしくする

・骨粗しょう症予防

わかめ、昆布、めかぶ、もずく、フカヒレ、すっぽん、オクラ、やまいも、なめこ
不溶性食物繊 キチン・キトサン ・アレルギー性疾患改善・抗ガン作用・コレステロールの調整

・便秘改善

・肝機能活性化

・血圧抑制

・目の健康維持

カニの甲羅、エビの殻、シャコの甲羅、イカの軟骨、チーズ、きのこ類
セルロース ・腸内の善玉菌増殖・有害物質を排泄・食べ過ぎ抑制 ごぼう、小麦ふすま、玄米、大豆
ヘミセルロース ・腸内の善玉菌増殖・有害物質を排泄・食べ過ぎ抑制 ごぼう、小麦ふすま、玄米、大豆
イヌリン ・血糖値抑制・腸内環境改善 ごぼう、キクイモ、チコリー、にんにく
グルカン ・抗ガン作用・生活習慣病予防 干ししいたけ、きくらげ、しめじ、ひらたけ、アガリクス茸
リグニン ・コレステロールの調整・腸内環境を整える いちご、なし、ラズベリー、豆類、ココア
コーンファイバー ・コレステロールの調整・血糖値抑制 (コーンファイバーを添加した)ビスケット、クッキー、パン

 

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炭水化物 食物繊維 比率
精白米 34.4g 0.5g 1.5%
小麦粉 75.9g 2.5g 3.3%
精白ご飯 37.1g 0.3g 0.8%
食パン 46.7g 2.3g 4.9%
上白糖 99.2g 0g 0.0%
ほうれん草(茹で) 4.0g 3.6g 90.0%
大根 4.1g 1.4g 34.1%
もやし(茹で) 2.2g 2.2g 100.0%
ふき(茹で) 1.9g 1.1g 57.9%
枝豆(茹で) 8.9g 4.6g 51.7%
イチゴ 8.5g 1.4g 16.5%

 

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野菜、きのこ、海藻などは低カロリーで食物繊維を豊富に含んでいます。これらを摂ると糖の吸収を遅らせる、血糖値が上がるのを防いでくれるといいますが、実は食べる順番を間違えると効果を十分発揮できません。最初にもずくやワカメ、山芋など水溶性の食物繊維を含んだ食べ物を食べると、胃の中にネットを張った状態を作り、次に入ってくる食べ物の糖を絡め取るのです。そして血糖値の上昇を抑えます。
また、野菜など不溶性の食物繊維は噛みごたえがあり、よく噛んで食べると満腹感もあり食べ過ぎを防ぐことができます。

 

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いままでお話してきたように、「血液中のブドウ糖の量(血糖値)を一定に保つためのシステム」があるのですが、これが壊れた状態になるのが、糖尿病です。
昔は「糖尿病」になると、甘いものや炭水化物は食べてはいけない、といわれていました。
糖尿病とは、尿に糖が出る病気のように思われがちですが、正しくは「血液中にブドウ糖がたまり、増えすぎた状態が続く病気」です。甘いものや炭水化物がそのまま出ているわけではありません。
食事をすると、食べ物に含まれる糖質は分解されてブドウ糖となって吸収され、血液中のブドウ糖が増えて一時的に血糖値が上がります。すると、膵臓からインスリンというホルモンが分泌され、血糖値は下がる仕組みになっています。ところが、インスリンがすぐに分泌されなかったり、分泌されて血液中に多くあるにもかかわらず、うまく働かず血糖値の下がらない高血糖状態が続くのが「糖尿病」です。

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1 適正体重を維持し、肥満にならないよう気をつけよう。
BMIが25以上にならないよう(BMI=身長×身長×22)

2 食事は栄養バランスのよいものを摂り、食べ過ぎに注意しよう。
・野菜は1日に350g以上、そのうち緑黄色野菜は120g以上摂ろう。

・亜鉛、タウリンなどインスリンの働きをよくする食品を摂ろう。
→亜鉛を多く含む食品…牡蠣、タラバガニ、牛肩、レンズ豆、そら豆、大豆
→タウリンを多く含む食品…サザエ、トコブシ、ホタテ、アサリ、槍イカ、マグロ

・脂肪細胞から分泌される善玉ホルモン・アディポネクチンを含む食品を摂ろう。
→アディポネクチンを増やす食品・・・マグネシウム・海藻類、青魚、大豆

・白米より玄米など全粒穀物を食べよう。
・甘いものや脂っぽいものは食べ過ぎないようにしよう。
・味付けは薄味にしよう。
・調味料は料理にかけずにつけて食べる習慣を。
・食事は決まった時間に、時間をかけて食べよう。
朝食を抜いたり、寝る前時間以内の食事は避けよう。
・一人分ずつ取り分けて食べよう。
・ながら食いはやめよう。

3 適度の運動をしましょう。
運動をすることで身体についた中性脂肪を減らしたり、筋肉をつけて基礎代謝の高い身体となります。また、筋肉を動かすと、たんぱく質酵素・AMPキナーゼが活性化し、糖や脂肪をエネルギーに変えてくれることもわかったそうです。

 

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一般的には、空腹のときはだれでも血糖値は下がり、食事を摂れば血糖値が上がります。
朝食を摂る前の空腹時の血糖値は、健康な人では70mg/㎗~110mg/㎗未満の数値になるのが普通です。この数値が126mg/㎗を超えたら糖尿病であることを疑います。
一方、時間を特定せず測定した血糖値が200mg/㎗を超える場合も糖尿病の可能性が高くなります。
また、12時間何も食べない空腹の状態で、ブドウ糖液を飲んで血糖値の変化を調べる「ブドウ糖負荷試験」による方法もあります。この方法では同時にインスリンの濃度を調べれば、インスリンの分泌状況がわかります。ブドウ糖負荷試験の2時間後の血糖値が140mg/㎗未満なら正常型、200mg/㎗以上の場合を糖尿病型の判定基準としています。

 

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  • のどが渇く
  • 尿の量が増える
  • 疲れやすい(だるい)
  • 体重が減る
  • 手足のしびれやこむら返りが起こる

 

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・神経障害、網膜症、腎症、心筋梗塞、脳卒中など、生活の質を落とす病気にまで発展することもあります。

 

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nutrituion.ueda.image 京都生まれ、京都育ち。
病院・保健所・役所などに勤務後、雑誌の企画・編集・執筆に携わる。やがて、伝統ある町の魅力を全国に伝えるかたわら、食の専門家としても活動を開始。料理本の企画・執筆、栄養指導を経て、やがて京都のおばんざい教室『よろしゅうおあがり』を立ち上げる。こうした経験をいかし、現在も医療の現場や企業での栄養管理・指導にまで活躍の場を広げ、今もさまざまな料理レシピを生みだし続けている。

 

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