病気にならない「予防栄養学」講座

第6回 ビタミンの種類と働き

nutrituion.06-01

nutrituion.checkpoint

POINT1 ビタミンには水溶性のものと脂溶性の2種類がある。

POINT2 ビタミンによく似た働きをもつ「ビタミン様物質」に注目!

POINT3 旬や栽培方法によって、食物に含まれるビタミン量は異なる。

 

ビタミンは、三大栄養素の糖質、脂質、たんぱく質のようにエネルギー源や体の構成成分にはなりませんが、三大栄養素の働きを支え、代謝を助けたり、体の調子を整えるなど体の機能を正常に維持するために欠かすことのできない栄養素です。今話題の酵素もビタミンがなければ、力を発揮できないのです。
現在、正式に認められているビタミンは13種類で、身体に必要な量はわずかですが、ほとんどは体内で合成できないか、合成できても十分量ではないため、毎日の食事から摂取する必要があり、不足すると様々な欠乏症状を引き起こします。
昔のように、脚気や夜盲症といったビタミン欠乏症はほとんどみられなくなりましたが、ダイエットなど極端な食事制限や、外食中心の食事、加工食品に偏った食事を続けていると、何となくだるい、疲れやすいなどビタミン不足が起きている場合もあります。

 

nutrituion.06-02

ビタミンは水に溶けやすい性質を持つ「水溶性ビタミン」と、
油脂やアルコールに溶けやすい性質を持つ「脂溶性ビタミン」に分けられます。

種類 働き 欠乏症 過剰症
脂溶性ビタミン ビタミンA 目の網膜色素の成分、皮膚・粘膜を健康に保つ、抗ガン作用 夜盲症、皮膚乾燥症 頭痛、吐き気、肝障害、奇形児出産リスクの向上
ビタミンD カルシウムの吸収促進、骨の成長促進、血中カルシウム濃度の調節 くる病、骨軟化症、骨粗しょう症 高カルシウム血症
ビタミンE ビタミンAやカロテンの酸化を防ぐ、生体膜を健全に保つ、過酸化脂質の生成防止、老化防止、赤血球の溶血防止 血行不良、動脈硬化、溶血性貧血 軽度の肝機能障害
ビタミンK 補酵素として血液凝固に関与、カルシウムの結合たんぱく質の生成 血液凝固遅延、骨粗しょう症 報告なし
水溶

ビタ

B

ビタミンB1 補酵素として糖質の代謝に関与、神経機能を正常に保つ 脚気、多発性神経炎 通常の食事ではなし
ビタミンB2 補酵素として糖質・脂質・たんぱく質の代謝に関与、成長促進、過酸化脂質の分解 口内炎、肌荒れ、脂漏性皮膚炎 通常の食事ではなし
ビタミンB6 補酵素として、アミノ酸の代謝に関与、神経伝達物質の合成 皮膚炎、口内炎、不眠症、貧血 通常の食事ではなし
葉酸 赤血球を作り出す、たんぱく質の合成にも関与、補酵素としてDNA合成に関与、胎児の先天異常の予防 巨赤芽球性貧血、口内炎 通常の食事ではなし
ナイアシン 補酵素として糖質・脂質・たんぱく質の代謝に関与 皮膚トラブル、神経障害 皮膚炎、嘔吐、下痢
パントテン酸 補酵素として糖質・脂質・たんぱく質の代謝に関与 疲労感、頭痛、手足のしびれ 通常の食事ではなし
ビオチン 補酵素として糖質・脂質・たんぱく質の代謝に関与 皮膚炎、脱毛 通常の食事ではなし
ビタミンB12 アミノ酸代謝、たんぱく質、核酸の生合成に関与 悪性貧血、神経障害 通常の食事ではなし
ビタミンC コラーゲン合成、筋肉・血管・皮膚・骨の強化、過酸化脂質の生成を抑制、抗ガン作用 壊血病、コラーゲン形成不全 通常の食事ではなし

 

nutrituion.06-03

nutrituion.06-04

脂溶性ビタミンは、通常の食品から摂っている場合は過剰症の心配はありませんが、サプリメントなどで大量に摂ると、内臓(肝臓など)や皮下細胞に蓄積されるため、吐き気、頭痛など過剰症を起こすこともありますので、摂りすぎには注意しましょう。

nutrituion.06-05nutrituion.06-07nutrituion.06-09nutrituion.06-11
※ボタンクリックでそれぞれのビタミン詳細がご覧いただけます。

 

nutrituion.06-13

nutrituion.06-14

水溶性ビタミンは、主にエネルギー代謝に働くビタミンB群と、抗酸化物質として働くビタミンCがあります。いずれも体内で必要な分だけが使われ、余った分は、尿や汗で出てしまうので、毎食、食べ物から摂らねばなりません。

nutrituion.06-15nutrituion.06-17nutrituion.06-19nutrituion.06-21nutrituion.06-23nutrituion.06-25nutrituion.06-27nutrituion.06-29nutrituion.06-33
※ボタンクリックでそれぞれのビタミン詳細がご覧いただけます。

 

nutrituion.06-35

nutrituion.06-36

ビタミンB群(B1、B2、B6、B12、パントテン酸、ナイアシン、葉酸、ビオチン)は、三大栄養素を分解してエネルギーや身体を作る材料を合成する(これを「代謝」という)過程で、酵素を助ける「補酵素」として働いています。

注)酵素・・・アミノ酸がいくつか結びついたたんぱく質(アポ酵素)で、体内で作り出されますが、そのままでは十分な働きができません。
つまり、補酵素と結合することで酵素としての働きができるのです。

 

nutrituion.06-37

大根とにんじんを一緒にすりおろす「もみじおろし」は、にんじんに含まれているアスコルビナーゼというビタミンC破壊酵素が働き、ビタミンCが壊れてしまう。にんじん、きゅうり、かぼちゃなどにはこの破壊酵素が含まれているので、ビタミンCを含む野菜と合わせて調理する場合にはCを補うレモンなどを一緒に摂ることをすすめていました。今でも一般向けの栄養参考書や書籍、インターネット上に掲載されています。でも、実際にはビタミンCの量は変わらないことが実証されていたのです。
ビタミンCには還元型のビタミンC(アスコルビン酸)と、これが酸化してできる酸化型ビタミンC(デヒドロアスコルビン酸)の2つがあります。今から40年ほど前には、酸化型ビタミンCの効力が還元型ビタミンCの半分ぐらいだと考えられていたのです。だいこんの還元型ビタミンCがにんじんに含まれているアスコルビン酸酸化酵素などにより酸化型ビタミンCに変わり、ビタミンCが減ってしまうとされていたようです。しかし、女子栄養大学の実験では、もみじおろしの還元型ビタミンCが酸化型に変わっても総ビタミンCの量はかわらず、1970年代に行われた人体実験の結果、酸化型にも還元型と同等のビタミンC効力があることがわかったのです。その後の実験では、人体内では酸化型ビタミンCが還元型に変化することも報告されています。

 

nutrituion.06-38

水溶性ビタミンと異なり、脂溶性ビタミンは体内に蓄積しやすい性質がありますので、人体試験から必要量を算出することができなかったのですが、「日本人の食事摂取基準(2010年版)」で、ビタミンAは肝臓貯蔵量から推奨量が、また、D、E、Kは平均的な摂取量から目標量が策定されました。

nutrituion.06-39nutrituion.06-41nutrituion.06-43nutrituion.06-45nutrituion.06-47nutrituion.06-49nutrituion.06-51nutrituion.06-53nutrituion.06-55nutrituion.06-57nutrituion.06-59nutrituion.06-61
※ボタンクリックでそれぞれのビタミン詳細がご覧いただけます。

 

nutrituion.06-63

nutrituion.06-64

ビタミンと似た重要な働きをしていますが、体内合成で足りている、欠乏症が起こらないなどの理由でビタミンの仲間には加えられていない物質です。
近年、疾病予防や健康維持に役立つ有用な栄養素として注目され、実際に医療品として利用されているものもあります。その一部を紹介しましょう。

□コエンザイムQ(ビタミンQ)
強い抗酸化力を持ち、細胞の酸化を防ぐところから、生活習慣病の予防やアンチエイジングに利用されています。12種ある同族体のうちQ10は、心不全や虚血性心疾患を改善する効果が期待されています。加齢とともに減少するので、食事やサプリメントなどで適量を摂りましょう。
<多く含む食品>レバー、牛肉、豚肉、カツオ、マグロ、落花生

□リポ酸
ビタミンB1とともに糖質の代謝に関与しています。抗酸化作用を持つことから、ビタミンC・Eが不足すると働きを補います。

□ビタミンU(キャベジン)
過剰な胃酸の分泌を抑制し、傷ついた粘膜を治す働きから、胃潰瘍・十二指腸潰瘍の予防・治療に役立っています。
<多く含む食品>キャベツ、レタス、セロリ、青のり

□ビタミンP
シチリン、ルチンなどフラボノイド化合物のことです。ルチンはビタミンCと働き、毛細血管を丈夫にすることで、高血圧や脳卒中の予防に効果的です。食品ではそばに多く含まれますが、水溶性なので、茹で汁に溶け出します。
<多く含む食品>みかん、レモン、オレンジ、そば

 

nutrituion.06-65

nutrituion.06-66

北海道立農業試験場は、原因を下記の通り説明しています。

1)生育の早い品種の導入
2)ハウス栽培の増加
3)旬を無視した通年栽培
4)肥料過多による糖やビタミン・ミネラルの減少

実際どれぐらい野菜の成分がどのように変わったかを、四訂食品成分表(1982年)と五訂食品成分表(2000年)で比較してみましょう。

四訂食品成分表と五訂食品成分表との比較(ビタミン)

ビタミン
カロテン(μg) E (mg) B1 (mg) B2 (mg) ナイアシン (mg) C (mg)
ブロッコリー 花らい・生(四訂) 720 1.8 0.12 0.27 1.2 160
ブロッコリー 花序・生(五訂) 810 2.5 0.14 0.20 0.8 120
ほうれんそう 葉・生(四訂) 5200 2.5 0.13 0.23 0.6 65
ほうれんそう 葉・生(五訂) 4200 2.1 0.11 0.20 0.6 35
キャベツ 結球葉・生(四訂) 18 0.1 0.05 0.05 0.2 44
キャベツ 結球葉・生(五訂) 50 0.1 0.04 0.03 0.2 41
にんじん 根・生(四訂) 7300 0.4 0.07 0.05 0.9 6
にんじん 根・皮つき・生(五訂) 9100 0.5 0.05 0.04 0.7 4
トマト 果実・生(四訂) 390 0.8 0.05 0.03 0.5 20
トマト 果実・生(五訂) 540 0.9 0.05 0.02 0.7 15
きゅうり 果実・生(四訂) 150 0.4 0.04 0.04 0.2 13
きゅうり 果実・生(五訂) 330 0.3 0.03 0.03 0.2 14
じゃがいも 塊茎・生(四訂) φ 0.1 0.03 0.03 1.8 23
じゃがいも 塊茎・生(五訂) Tr Tr 0.03 0.03 1.3 35

※日本食品成分表 「五訂日本食品標準成分表」より抜粋
nutrituion.06-67

年流通する野菜は増え、旬の時期だけしか食べられなかった野菜が年中食べられるようになりました。また、品種改良で消費者の嗜好に合わせた野菜が作られようになり、栄養価よりニーズを優先しています。その一方では、一部ですが、昔ながらの野菜を生産しているところもあり、一部のスーパーでは販売しています。生産地を問題にするならば、国内のみならず海外からの輸入野菜が全体の2割を占めていることも考えねばなりません。
栄養成分は『日本食品標準成分表』(「五訂食品成分表」)に収載されたものを基準にしていますが、野菜・くだものの数種類については、女子栄養大学生物有機化学研究室が1985年~2000年の15年間にわたり、主要な野菜の各種ビタミン・ミネラルなどの栄養成分の測定を行い、分析実験したものを参考資料としています。

 

nutrituion.06-68

(1人1日当たり)
年代 野菜摂取量
昭和46年 321g
昭和51年 302g
昭和61年 308g
平成3年 288g
平成8年 287g
平成13年 276g

女子栄養大学教授辻村卓氏の報告によると「一年を通しての分析結果からみると、季節による栄養成分の変動が少ないのは、セロリとピーマンで、多くの野菜は季節変動が大きいことがはっきりしました。ほうれん草については、備考欄に夏採りと冬採りのビタミンCが記載されていますが、外にはありません。旬の野菜の栄養価が高いことは知られていますが、実際には1食品1標準成分値です。あくまで、全国的な平均値で、ある程度幅があることを知っておきたいものです。」
旬の意識も薄らいでいますが、「夏場のキャベツは、ほうれん草よりもビタミンCが豊富。にんじんは5月~9月が旬と思われ、この時期にカロテンの値が高い。同じように、じゃがいもは6月~9月が旬でビタミンCの値が高い。トマトは6月~9月にビタミンCの値が高い」とも記されています。
野菜は栄養価のみならず変化していることは確かですが、それ以上に問題なのは、国民1人当たりの野菜消費量が減ってきていることです。厚生労働省が提唱している「1日350g以上」をはるかに下回っています。旬のものはもちろん、年中食べられるようになった野菜を多く食することで、自然に摂取する栄養量も増えるはずです。

 

nutrituion.ueda.name

nutrituion.ueda.image 京都生まれ、京都育ち。
病院・保健所・役所などに勤務後、雑誌の企画・編集・執筆に携わる。やがて、伝統ある町の魅力を全国に伝えるかたわら、食の専門家としても活動を開始。料理本の企画・執筆、栄養指導を経て、やがて京都のおばんざい教室『よろしゅうおあがり』を立ち上げる。こうした経験をいかし、現在も医療の現場や企業での栄養管理・指導にまで活躍の場を広げ、今もさまざまな料理レシピを生みだし続けている。

 

nutrituion.content

このページの先頭へ