病気にならない「予防栄養学」講座

第9回 子供の栄養―味覚を育てる食事―

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POINT1 「食べる力」を発達させて、楽しく食べる子どもに。

POINT2 子どもの摂るべき栄養と食事の関係を学ぼう。(乳児~幼児)

POINT3 それぞれの年代に合わせた、献立を考えよう。

 

乳幼児期、学童期の子どもは、身体的に目覚ましい成長を遂げる時期です。そして、発達のピークを迎える中学生へと向かいますが、この間は嗜好・食習慣の基礎がつくられる大切な時期でもあるのです。
平成17年には「食育基本法」が制定され、未来を担う子どもたちが健全な心と身体を培い豊かな人間性を育んでいくための「食」が改めてクローズアップされてきました。

 

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生まれたての赤ちゃんは、哺乳反射によって母乳を吸いますが、これが最初の食べるという行動、すなわち、「食べる力」なのです。
生後5~6か月までの乳児にとって唯一の栄養源は母乳です。出生時30~60mlだった胃の容量は6か月までに120~200ml 、6~12か月には200~300mlとなり、その後急速に大きくなって、幼児では大人の1/3(成人は約3リットル)になります。体重をみると、新生児は1日30gずつ増え、1か月で約1kg増え、そして3~4か月で出生時の約2倍となるのです。この発育に応じて発達するのが「食べる力」です。
そして栄養摂取だけでなく、発育に応じて食欲、味覚、食べ物への関心も芽生えてきます。 食を通しての楽しい経験を重ねるほど、食べることが楽しいことだと思える子に育ちます。

【発育・発達過程で育つ「食べる力」】

授乳期/離乳期 ・安心と安らぎの中でミルクを飲んでいる(食べている)心地よさを味わう・お腹が空くリズムをもつ

・いろいろな食品に親しむ(見て、触って、自分で食べようとする)味覚など五感を味わう

幼児期 ・食べたいもの、好きなものが増える・自分で食べる量を調節する

・よく噛んで食べる

・食事マナーを身につける

・家族や仲間と食べることを楽しむ

・栽培、収穫、調理を通して、わくわくしながら食べ物に触れる

・食べ物や身体のことを話題にする

学童期 ・1日3回の食事や間食のリズムをもつ・食事・栄養のバランスがわかる

・家族や仲間のために食事づくりや準備ができる

・自然と食べ物との関わり、地域と食べ物との関わりに関心をもつ

・家族や仲間と食べることを楽しむ

・食生活や健康を大切だと思うことができる

・自分の食生活を振り返り、評価し、改善できる

思春期 ・食べたい食事のイメージを描き、それを実現できる・一緒に食べる人を気遣い、楽しく食べることができる

・食糧の生産・流通から食卓までのプロセスがわかる

・自分の身体の成長や体調の変化を知り、自分の身体を大切にできる

・食生活や健康に関連した情報を得て、理解して、利用できる

・食に関わる活動を計画したり、積極的に参加したりすることができる

それでは、発育・発達を続ける子どもが心身ともに健やかに過ごすためには、毎日の食事からどれだけの栄養を摂ればいいのでしょう。詳しくは1人1日あたりの食事摂取基準

年齢 標準体位(基準身長・基準体重) エネルギーの食事摂取基準:推定エネルギー必要量(Kcal/日)
男性
女性
男性
女性
標準身長(cm)
標準体重(kg)
標準身長(cm)
標準体重(kg)
身体活動レベル
身体活動レベル
I
II
III
I
II
III
0-5(月) 61.5 6.4 66.0 5.9 550 500
6-8(月) 69.7 8.5 68.1 7.8 650 600
9-11(月) 73.2 91 71.6 8.5 700 650
1-2(乳児) 85.0 11.7 84.0 11.0 1000 900
3-5(幼児) 103.4 16.2 103.2 16.2 1300 1250
6-7(小学校1・2年) 120.0 22.0 118.6 22.0 1350 1550 1700 1250 1450 1650
8-9(小学校3・4年) 1300 27.5 130.2 27.2 1600 1800 2050 1500 1700 1900
10-11(小学校5・6年) 142.9 35.5 141.4 34.5 1950 2250 2500 1750 2000 2250
12-14(中学生) 159.6 48.0 155.0 46.0 2200 2500 2750 2000 2250 2550

 

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乳児期は、母乳(育児ミルク)が栄養源です。哺乳量が足りているかは、赤ちゃんの表情や健康状況から把握できますし、体重の増加がめやすとなります。

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生後6~7か月頃になると、乳汁を飲むのも乳児の意思(随時的)によりなされるので、そろそろ離乳食を始めます。以前は離乳食の開始準備期に果汁を与えていましたが、与えることで乳汁摂取量の減少、摂取栄養量低下の恐れなど栄養学的な意義が認められないことから果汁は与えないことになりました。開始から1か月は、1日1回の離乳食後に乳汁は子どもが欲するだけ与えます。開始1か月を過ぎた頃から離乳食は2回にして、離乳食後の母乳は欲しがるだけ、育児用ミルクは1日3回程度と、月例などで進めていきます(詳しくは<離乳食の進め方の目安> 表B、参照)が、<成長の目安>を成長曲線グラフ 表Cに照らし合わせたり、<咀しゃく機能の発達の目安>表Dなどを参考に、無理のないように進めるといいでしょう。

生後9か月以降は鉄が不足しやすいので、赤身の魚や肉、レバーなどをつとめて離乳食に摂り入れるようにしましょう。

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生後12か月から1歳半ぐらいになると、母乳や育児用ミルク以外の食べ物から栄養素の大部分を摂るようになり、離乳は完了します。しかし、消化機能や咀しゃく力はまだ未熟なので、3回の食事だけで必要な栄養量を摂ろうとすると胃腸に負担がかかります。そのために、1~2回の間食を加えた食事回数にする必要があるのです。

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離乳期でいろいろな味に出合い、味覚の幅は広がったでしょうが、本格的な味を覚えるのはこの時期からです。食事の栄養バランスを整えるためにも、主食・主菜・副菜 (後述)の形を揃えましょう。好き嫌いやムラ食いも生じますが、無理強いは禁物。よく遊ばせて、空腹感を体験させ、食欲に応じた「適量」を与えましょう。

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・1日に必要なエネルギー 男1300kcal、 女1250kcal を食品(単位:g)に置き換えると
【穀類】男170女150  【魚介・肉】男女60 【豆・豆製品】男女60 【卵】男女30 【乳・乳製品】男女250 【野菜】男女240   【芋類】男女60   【果物】男女150            【さとう】男女5    【油脂】男女10
これを朝・昼・夕食と間食で摂ります。1食をおおよそ350~400kcalとすると
・献立例 (357~382kcal)
主食 ごはん110~125g  185~210kcal
主菜 豆腐ハンバーグ・野菜添え 136kcal
副菜 野菜と春雨の酢の物    22kcal
汁物 野菜スープ        10kcal

 

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基本味には、甘み、旨味、塩味、酸味、苦味があります。甘みは糖質の味で、旨味はたんぱく質などに含まれるグルタミン酸などの味です。この2つの味は母乳に多く含まれていて、人間が本能的に好む味です。塩味、酸味、苦味は離乳が進む中で味覚として育っていきます。昔は舌の場所によってそれぞれの味を感じると言われてきましたが、本当は舌の一つずつの「味雷」が5味を感知するのです。味雷には特定の味成分と結合するたんぱく質(味受容体)が5種存在し、それぞれの味がわかるそうです。自然の味がわかる鋭敏な舌を育てるよう料理は薄味で!

 

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小学校に入り共同生活が始まります。昼食は学校給食で1日の必要量の33%を摂ります。新しい料理や味にも出合い食の幅は増えますが、家庭では大人と同じ味付けを食べることが多く、塩分・糖分・動物性脂肪の摂り過ぎが危ぶまれます。また、歯が生え変わる時期ですから、よく噛んで食べる習慣をつけましょう。料理や食品も柔らかいものだけにならないよう、食物繊維の多い野菜・海藻・豆類・乾物などを取り入れて、いろいろな食品が食べられるよう家庭でも工夫することが大切です。

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・1日に摂りたい食品(単位:g)
【穀類】男200女180  【魚介・肉】男女80 【豆・豆製品】男女60 【卵】男女50 【乳・乳製品】男300女250 【野菜】男女270 【芋類】男女60 【果物】男女150 【さとう】男女10【油脂】男女10
・献立例(463~497kcal)
主食 ごはん(130~150g) 218~252kcal
主菜 さばの味噌煮 159kcal
副菜 ほうれん草とキノコのごま和え 26kcal
汁物 卵と豆腐、わかめのすまし汁 46kcal
香の物 かぶの甘酢 14kcal

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身体的成長も幼児期と同じように目覚ましく、体重は大人の半分になります。活動も活発で、バランスの良い食事がますます必要です。肉に偏らず、魚や植物性たんぱくを取り入れた料理、野菜をたっぷり組み合わせた手作り料理を供しましょう。塾通いや夜型生活になる子どもが増え、朝食を摂らない子どもも出てきます。朝食の大切さや家族揃っての食事の大切さも教えましょう(孤食・個食にならないよう周りの大人の配慮が大切です)。

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・1日に摂りたい食品(単位:g)
【穀類】男250女220 【魚介・肉】男120女80【豆・豆製品】男女80 【卵】男女50 【乳・乳製品】男女330 【野菜】男女300 【芋類】男女60 【果物】男女200 【さとう】男女10【油脂】男女15
・献立例(553~586kcal)
主食・主菜 きじ焼き丼 ごはん160~180g(439~472kcal)
副菜    ひじきサラダ(84kcal)
副菜 ほうれん草とキノコのごま和え 26kcal
汁物    アサリの味噌汁(25kcal)
香の物   白菜の浅漬け(5kcal)

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成人に近い栄養が必要な時期です。食欲も旺盛になりますので、副菜の量も増やしましょう。インスタント食品や嗜好飲料なども自由に食べるようになりますが、肥満、糖尿病、脂質異常など生活習慣病やその予備軍が増えているので、食生活に気を付けることを教えましょう。また、女子は月経がはじまると、鉄分が不足しやすくなりますので、緑黄色野菜やレバー、大豆製品などを多く摂るようにします。1日3回の食事を規則正しく摂り、ビタミン、ミネラルなども不足しないように注意しましょう。

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・1日に摂りたい食品(単位:g)
【穀類】男300女260 【魚介・肉】男140女100【豆・豆製品】男女80 【卵】男女50 【乳・乳製品】男女350 【野菜】男女350 【芋類】男女100 【果物】男女200 【さとう】男女10 【油脂】男女20
・献立例(635~685kcal)
主食 ごはん190~220g ( 320~370kcal)
主菜 かに玉 131kcal
副菜 エビ天・野菜添え 49kcal
汁物 白菜スープ 26kcal
デザート 大学芋 109kcal

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心理的な影響を受けやすい時期。今こそバランスのとれた食事を!
成長に見合った栄養量を確保することは大切ですが、骨量がもっとも増えるこの時期は、カルシウムを充分摂る食事をこころがけましょう。女子の中には無理なダイエットを続け、貧血や無月経に陥ることもあります。

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・1日に摂りたい食品(単位:g)
【穀類】男330女320 【魚介・肉】男160女120 【豆・豆製品】男100女80  【卵】男女50【乳・乳製品】男400女350 【野菜】男女350【芋類】男女100  【果物】男女200 【さとう】男女10【油脂】男25 女20
・献立例(671~750kcal)
主食 ごはん230~250g(386~465kcal)
主菜 牡蠣のクリーム煮 157kcal
副菜 マセドアンサラダ 90kcal
デザート グレープフルーツ 38kcal

健康のためには、1日の食事量として「なにを」「どれだけ」食べたらよいかを示す「食事バランスガイド」(厚生労働省、農林水産省作成)を参考にするのもいいでしょう。 ・料理は以下の5つに区分しますが、あらまし決めた提供量(サービング)による単位により1つ、2つとカウントしてチェックします。 (例:3~5歳の女児エネルギー1250kcal 男児1300kcal 12歳以上の男性2600±200kcal)

料理区分 サービング数(つ)
主食(ご飯、パン、麺) 3~4 7~8
副菜(野菜、きのこ、いも、海藻料理) 4 6~7
主菜(肉、魚、卵、大豆料理) 3 4~6
牛乳・乳製品 2 2~3
果物 1~2 2~3

幼児と12歳以上の身体活動量「ふつう」の男性を比較すると、胃の大きさは1/3の幼児は かなり多く食べる必要があります。乳児期のみならず幼児期の子どもも、食事で摂り切れない分は時間を決めて間食で補いましょう。

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生涯の健康に大きな影響を及ぼす骨の健康は、乳幼児の頃からの食事が大切です。
骨は身体を支えるとともに、身体に必要なカルシウムの99%を貯蔵しています。残り1%は血液や筋肉、神経に含まれ機能カルシウムとして働いています。機能カルシウムが不足すると、骨の貯蔵カルシウムが溶け出して血中濃度を一定に保ち、精神安定などの働きを助けています。また、骨は皮膚と同じように古い骨が壊され、新しい骨がつくられる代謝を繰り返しています。骨の構成成分であるカルシウムやたんぱく質をしっかり摂ると同時に、代謝に必要なビタミンDも忘れず摂取しましょう。
カルシウムを多く含む食品(乳製品、大豆製品、小魚、青菜)、たんぱく質(肉、魚、大豆製品、乳製品)、ビタミンD(鮭、サンマ、卵黄など)

★ビタミンDは日光の働きにより皮膚で合成されますが、皮膚の老化防止や皮膚がん対策などから日光は避けられ傾向にあり、妊娠中の婦人もビタミンD欠乏に陥りやすく、正常新生児にもビタミンD欠乏症がみられるとの報告もあります。完全母乳の場合はとくにビタミンD摂取に気を付けると同時に、母子ともに短時間の日光浴が勧められています。メラニン色素の少ない掌を日光にかざす方法が最も良い方法とされています。

 

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特定の食べ物を食べたことが原因で、蕁麻疹、湿疹、下痢、咳、嘔吐などの症状が起こることを食物アレルギーといいます。原因になる食物成分はたんぱく質で、乳幼児では鶏卵、乳製品、小麦、大豆製品などで、学童期以降には、甲殻類、果物、魚類、そばなど新たな食品が加わるようです。成長とともに治ることもありますが、まずは原因となっている食品を除去することとなります。ただし、栄養的に優れた食品が多いので、栄養バランスを考え、代わりになる食品を摂ることが大切です。
例えば、鶏卵の代わりには、豚肉・牛肉、魚類を。牛乳の代わりには、ひじき・わかめ、ワカサギ、しらす干し、小松菜を。大豆(しょうゆ、味噌)の代わりには、小麦・稗・粟しょうゆ、大麦味噌を使います。

★アレルギー予防として、厚生労働省から出された離乳食の基準は、アレルギーの原因になりやすい食品を挙げて、一定の月齢まで与えないよう勧めています。

 

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nutrituion.ueda.image 京都生まれ、京都育ち。
病院・保健所・役所などに勤務後、雑誌の企画・編集・執筆に携わる。やがて、伝統ある町の魅力を全国に伝えるかたわら、食の専門家としても活動を開始。料理本の企画・執筆、栄養指導を経て、やがて京都のおばんざい教室『よろしゅうおあがり』を立ち上げる。こうした経験をいかし、現在も医療の現場や企業での栄養管理・指導にまで活躍の場を広げ、今もさまざまな料理レシピを生みだし続けている。

 

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