第2回 ストレスと胃腸の関係って?お腹の状態から見る「五月病」

さわやかな季節なのに、気分が晴れない…「五月病」
風薫る五月。五月を表すことばには「五月晴れ」とか、「若葉の候…」など爽やかで、心地よい季節を表す言葉が思い浮かびますよね。ところが、中には「五月病」などと少し気が滅入るような言葉も。
「五月病」とは、新入生や新入社員が新しい環境になじめず、ゴールデンウィーク明けに心身に不調がでる状況を指します。でも、医学的には「五月病」という病名はなく、「適応障害」、「気分障害」が正式な病名です。
「適応障害」とはストレスを原因として起こる情緒面や行動面のトラブル。憂うつな気分や不安が続いたり、学校や会社に行けなくなったり、あるいは物を壊す、暴力的になるなどの症状がみられることもあります。新入生や新入社員に限らず、職場の異動や昇進がきっかけとなって先輩社会人に起こることもあります。「適応障害」は学校や職場から離れてさえいれば、気分は晴れて楽しく過ごせるのに対して、「気分障害」はゆううつな気分が長く続きます。その代表的なものが「うつ病」や、落ち込みとハイな気分が繰り返される「躁うつ病(双極性障害)」です。
ストレス度では、40代女性がダントツ
厚生労働省の調べによると、12歳以上で悩みやストレスがある人の割合は46.5%。2人に一人がストレスをかかえています。男女とも40代が多く、特に40代女性は60.6%と6割を超えダントツです。子どもの進学や親の介護問題、そこに自身の更年期症状が加わるなど、いろいろ悩みの増える時期だからでしょうか。
一方、職場でも、ストレスからの適応障害、気分障害などを理由に労災保険が請求される件数は年々増加。リストラや超過労働など、ストレスの高い状況が続いているようです。
2015年12月より、社員が50人以上の会社では、従業員へのストレスチェックと医師による面接指導が義務化されることになりました。年に1度の健診に加え、心の健診が行われるわけです。
気分障害で食欲が低下することも
さて、そのストレスチェックの項目には、仕事の状況や心身の状態についての質問があるのはもちろんですが、胃腸の状態や食欲に関する質問もあります。
食欲とストレスの関係はよく言われています。「ストレスで食欲がない」「ストレスで胃が痛い」「ストレスのせいで、大食いしてしまう」など。うつ病などの気分障害では、ゆううつな気持ちや落ち込み、わけもなく悲しくなるなどの精神的な症状が表れる前に、食欲不振や疲労感などの身体症状が出ることがあります。ゆううつな気分という自覚がなくても、疲れがぬけない、食欲がないという場合、気分障害のサインかもしれません。
ストレスに負けない食事
どか食いなどでストレスを解消することはおすすめできませんが、バランスの良い栄養はストレスへの抵抗力をつける意味で大切です。ビタミンB・C群、タンパク質や抗酸化ビタミン、カルシウムやマグネシウムなどのミネラルは、ストレスから体を守る防御反応によって消耗するので、こうした栄養素を多く含む食品を十分に摂りたいものです。また、食事を抜いたり、夜遅く食事をしたりせず、できるだけ規則正しく3食きちんと摂ることが大切です。どんなに忙しくても食事ぐらいはゆっくり味わいながら楽しみたいですね。
ストレスに必要な栄養 | 多く含む食品 |
---|---|
ビタミンB群 | 豚肉、レバー、かつお、ぶり、さば、豆腐・納豆などの大豆製品、玄米など |
ビタミンC | ブロッコリー、小松菜、ピーマン、イチゴ、キウイフルーツ、かんきつ類など |
タンパク質 | 肉類、魚介類、牛乳、乳製品、卵など |
β−カロテン | ほうれん草、小松菜、かぼちゃ、ブロッコリー、にんじんなど |
カルシウム | 牛乳、乳製品、小魚、ひじき、切り乾し大根、小松菜など |
マグネシウム | かき、ホタテ貝、ピーナッツ、ごま、アーモンド、納豆など |
腸内細菌が気分障害に関係しているかも?
最近、メディアで注目されているのが「腸内フローラ」。これはいわゆる腸内細菌が集まったもので、私たちの健康に様々な影響を及ぼします。今、脳と腸内フローラの関係に研究者の関心が高まっており、腸内細菌を利用してうつ病などの気分障害を治療するための研究が進みつつあります。善玉菌の入ったヨーグルトなどを胃腸障害やアレルギーの改善に役立てることを「プロバイオティクス」といいますが、近い将来、気分障害を食事で治す「サイコ(心理)バイオティクス」が登場するかもしれません。
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