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第5回 物忘れは「認知症」の始まり?

第5回 物忘れは「認知症」の始まり?

「物忘れ」と「認知症」の微妙な関係

「朝ドラに出てる、あの人気タレント、なんて名前だっけ」とか、「バッグから出したスマホ、どこに置いたかな?」と人の名前がなかなか出てこなかったり、物を置き忘れたりすることが、歳を重ねるごとに多くなっていませんか?なかには「もしかしたら、認知症じゃない?」と家族から指摘され、不安に思っている方もいるかもしれません。

でも、安心してください。加齢による「物忘れ」と「認知症」は違います。

どういうことか説明しましょう。

加齢による「物忘れ」は記憶の「一部」を忘れてしまうことをいいます。例えば、昨夜何を食べたか覚えていなかったり、久しぶりにあった人の名前が思い出せなかったり。ただし、ヒントがあれば、「あ、そうだった!」と簡単に思い出すことができます。

一方、「認知症」の場合は、体験した事実そのものをすべて忘れてしまいます。メニューどころか、食事をしたこと自体を忘れてしまう、「誰と会ったか」どころか、人と会ったこと自体を覚えていない。このような状態が「認知症」です。

刺激ある生活が認知症を防ぐ

認知症はおもにアルツハイマー型認知症と血管性認知症にわかれ、高齢者の7人に1人が認知症と推定されています。さらに、2025年には約700万人、5人に一人は認知症になると推測されています。高齢化が進む日本では、認知症予防は大きな課題です。

しかし、残念ながらいま、認知症を根本的に治療する薬はありません。進行を抑える薬での治療が中心になりますので、早期発見・早期治療が最善策です。そして、認知症予防が何より大切です。

認知症予防のための生活習慣のポイントは、「頭も身体もよく使う」ことです。仕事の第一線から離れ、第2の人生を悠々自適に楽しむのは良いのですが、だからと言ってソファに寝そべって、テレビばかり見て動かない、そんな生活をしていたのでは認知症への道まっしぐらです。

囲碁や将棋、麻雀、俳句や短歌など頭を使う趣味や、日記を書く、料理をする、パソコンを習うなど創造的な活動は脳を刺激し、神経細胞を活発に働かせます。クロスワードパズルを解くのが好きな高齢者は、アルツハイマー病を発症するリスクがふつうの人の4分の1という調査報告もあります。活発に使った神経細胞が多いと、老化やアルツハイマー病などで働きが悪くなった細胞をカバーできる。つまり、知能の貯金ができるというのです。

さらに、ウォーキングや水泳、ダンスなどの運動もおすすめです。アルツハイマー病は、アミロイドβやタウと呼ばれるタンパク質が脳に蓄積することで脳機能を低下させると考えられています。運動すると、アミロイドβを分解する酵素が活性化され、蓄積を防ぐのです。運動は強いものより、30分程度の軽い有酸素運動を週に2〜3回行う方が良いでしょう。

また、人と交流することが少ない高齢者ほど認知症を発症しやすいという調査結果もあります。家族以外の友人とのつきあい、ご近所の方々との交わりなど交友関係を大切にし、積極的に外にでかける生活も認知症予防に効果があります。

認知症予防のための生活習慣のポイントイメージ

認知症予防が期待できる食事は?

さて、食事についてはどうでしょう。

福岡県の久山町で全住民を対象に続けられている有名な疫学調査「久山町研究」で、1985年から認知症の有病率とかかった人の食事や生活の分析が行われています。その結果、大豆・大豆製品、緑黄色野菜、淡色野菜、藻類、牛乳・乳製品を多く食べている方は認知症になりにくく、これらの人は果物・果物ジュース、イモ類、魚も多く摂り、お酒はあまり飲まない傾向があることがわかりました。

また、最近の栄養学の研究によれば、魚に多く含まれる脂肪酸のDHA(ドコサヘキサエン酸)とEPA(イコサペンタエン酸)には脳の神経細胞が受けるダメージを抑える効果があります。葉ものや藻類に含まれる「葉酸」も、脳にアルツハイマー病の原因物質・アミロイドβが蓄積するのを抑え、脳の神経細胞を損傷させるホモシステインを減少させる働きがあります。

主菜、副菜とバランスよく食べ、魚や野菜を欠かさない食生活が認知症の予防に役立ちます。

■認知症予防が期待できる活動と食品

活動 囲碁、将棋、麻雀、俳句、短歌、日記、料理、パズル、パソコン、ウォーキング、水泳、ダンスなど
食品 大豆・大豆製品、緑黄色野菜、淡色野菜、藻類、牛乳・乳製品、果物・果物ジュース、イモ類、魚

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