大人の食育

第10回 子どもの味覚 (子どもと一緒に育む食事シリーズ)

子どもの味覚(子どもと一緒に育む食事シリーズ)

新しい年になりました。1月から3月は、「子どもと一緒に育む食事」をテーマにいろいろ考えてみましょう。
昨年(2014年10月)、NHKで「子どもの味覚に異変がおきている」というニュースが流されました。―約350人の子どもを対象に、基本となる4つの味(甘味、塩味、酸味、苦味)を感じることができるかを調査したところ、いずれかの味を正しく感じることができない子どもが30%余りもいることがわかったのです。そして、味覚を感じることができなかった子どもには、共通の特徴があり、加工食品などの味の濃いものや、人工甘味料を使った飲み物を頻繁に口にしていた―ということでした。

STEP1:子どもの味覚はいつ育つ?

STEP1:子どもの味覚はいつ育つ?
「舌を育てる」とよくいいますが、子どもの味覚はいつごろから認められるのでしょう。人間の味覚は、胎児7週ごろに味(み)蕾(らい)(舌にある味を感じる器官)が発生し、12週ごろには成人と同じ形態となって味覚が発達します。出生後も発達はし続けますので、新生児は味に対する反応が強く、味蕾の数は成人の1.3倍(日本小児歯科学会)といわれています。成人で約1万個ですから、子どもは大人より味に対しては敏感なのです。
 しかし、味に対しては感じることはできても、好むかどうかという「嗜好」は別で、これがとても大切なのです。嗜好は母体のなかにいる(羊水をのむ)ところから始まっているそうで、母親が食べた食品の成分が、羊水や母乳に溶け出して子どもが慣れ親しむといわれています。

人の味覚は本能の部分に経験が加わって深まっていきます。
味には「甘味」「塩味」「酸味」「苦味」の基本味があり、これに最近「うま味」が加わりました。甘味はショ糖、塩味は食塩、酸味は酢酸やクエン酸、苦味は酢酸キニーネが代表的味物質です。
もともと動物は味覚によって生存してきましたから、好ましい味と有害な味を取捨選択することができます。甘味はエネルギー、塩味は体液のバランスを維持するためのミネラル分、酸味は腐敗、苦味は毒性です。ただし、人間はいろいろなものを食べた経験の中から、酸味や苦味の物質でも身体に害がないものは、選んで食べるようになりました。うま味は食べられるタンパク質が多いのです。
味覚は年齢に応じて少しずつ深みを持って発達していき、生後2~3ヶ月で味の好みが出始めます。甘味や塩味、うま味は本能的に好み、苦味や酸味を嫌います。しかし、苦味は野菜に、酸味は果物に多く含まれます。
また、味覚は複雑で、単体で甘い、酸っぱいと感じていたものも、組み合わせると甘味が酸味を抑えたり、引き立てたりするように複雑に影響を与え合います。
このように、豊かな味覚を形成するのには、いろいろな食品を食べる経験が大切なのです。

STEP2:未来の健康につながる子どもの舌を育てるのは、親の仕事。

STEP2:未来の健康につながる子どもの舌を育てるのは、親の仕事。
味蕾についてもう少し学んでみましょう。昔は舌で感じる味はその部分によって異なり、甘味は先、苦味は奥、塩味や酸味は舌の縁で感じとるといわれてきました。現在の科学では否定され、図Aのように、味蕾には味細胞が50から150集まっていて、5つの味を感知する味細胞が混在しているとされています。
味覚は味蕾(味細胞にある受容体の結合)からの信号が、脳に伝えられことで味が理解できるのです。簡単にいえば、舌と脳で味を感じているのですから、舌を育てるというのは、脳に経験を積み重ねることなのです。
味の感じ方は個々によっても異なりますが、これは感受性の程度や発達が遺伝的レベルでほぼ決まっていて、教育や経験ではなかなか変えられないというのが学術界の主流です。ただし、さまざまな経験が認知する力を大きく変えるとされています。

STEP2:未来の健康につながる子どもの舌を育てるのは、親の仕事。

結論として、いろいろな食品を母子が食べ経験することで、味覚はある程度作られるといえそうですが、子どもの場合は、感じる味を言葉に変えて表現する力を養うことも大切です。
「甘い」「しょっぱい」など周りの人が発する言葉を聞き、これを甘い、塩辛いと言うのだと認識し、言葉で表せるようになるのです。
お母さんのおなかの中にいるときから、酸味や苦味のあるもの果物や野菜など偏りのない食事を摂り、おなかの子どもに語りかけるのも「食育」のひとつではないでしょうか。
味を感じとれるようになったら、本能に任せず野菜や果物(酸味や苦味)を好んで食べるように導き、甘味や塩味は適度に食べる子どもに育てましょう。これが将来の健康につながっていくのです。

<コラム>

「平成25年の国民健康・栄養調査の結果」―2014年12月厚生労働省発表から―

(平成15年~25年の推移)
○主な食品群別摂取量は、10年間でほとんど変わらないのですが、魚介類の摂取量は減少傾向、肉類は増加傾向がみられます。
○生活習慣病の予防の観点から栄養バランスのとれた食事をすすめていますが、3食ともに穀類、魚介類、肉類、卵、大豆(大豆製品)、野菜を組み合わせて食べている人の割合は、男女とも年齢が若いほど低い傾向です。
○エネルギー収支バランスの指標としての体格状況は、BMI「ふつう」の範囲に当てはまる人の割合は男女とも6割を超えています。しかし、男女とも「やせ」の範囲に当てはまる人は20歳代が最も高く、女性は2割を超えています。

【参考】BMI(Body Mass Index)kg/㎡=体重(kg)/身長(㎡)
「日本人の食事摂取基準(2015年版)」では、エネルギーの指標として体格(BMI)を採用するようになりました。「やせ」(18.5kg/㎡未満) 「ふつう」(18.5kg/㎡以上 25kg/㎡) 「肥満」(125kg/㎡以上)

毎年おこなわれる「国民健康・栄養調査」ですが、調査結果から、健康と栄養についてもう一度考えてみるのもいいのではないではないでしょうか。
www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou…/0000068070.pdf

 

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nutrituion.ueda.image 京都生まれ、京都育ち。
病院・保健所・役所などに勤務後、雑誌の企画・編集・執筆に携わる。やがて、伝統ある町の魅力を全国に伝えるかたわら、食の専門家としても活動を開始。料理本の企画・執筆、栄養指導を経て、やがて京都のおばんざい教室『よろしゅうおあがり』を立ち上げる。こうした経験をいかし、現在も医療の現場や企業での栄養管理・指導にまで活躍の場を広げ、今もさまざまな料理レシピを生みだし続けている。

 

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