教えて達人!あなたの健康習慣

真言宗大本山隨心院 亀谷英央 寺務長 《前編》

いろんな業界の第一線で活躍されている達人に、日頃の健康習慣についてインタビューする「教えて!あなたの健康習慣」。第三回目のゲストは、小野小町ゆかりのお寺、京都山科にあります真言宗 大本山 隨心院 亀谷英央寺務長に、お寺さん、お坊さんの健康習慣についてお聞きしました。

 

『今回の達人』

真言宗 大本山 隨心院 寺務長
福勝寺 住職
亀谷 英央(かめたに えいおう)様

 

プロフィール

1961年(昭和36年12月28日)生まれ。

昭和55年3月私立洛南高校卒業

昭和60年3月香川大学農学部卒業

昭和62年3月京都府立大学大学院農学研究科修了

昭和63年3月高野山専修学院卒業

平成3年4月福勝寺副住職

平成20年7月福勝寺住職

善通寺派青年会会長、全真言宗青年連盟事務局長、同理事長歴任

平成10年12月大本山隨心院執事、同20年7月大本山隨心院執事長、同29年1月寺務長就任現在に至る。

 

——— まず僧侶になられたきっかけというのは?

 

亀谷英央寺務長(以下、亀谷)  家がお寺でしたからね。ただ、私も正直言ってなりたくないとまでは言いませんけど、お寺の勉強よりも好きなことがあったので、大学やら大学院はまったく違う関連のところに行きました。僕は農学部に行ってたんですよ。農学部の昆虫学教室に行っていました。

だから大学院まで昆虫の勉強をやっていたんですよね。大学院を出てから、高野山の専修学院で1年間修行して、お坊さんになりました。今住んでいるお寺、つまり自坊の福勝寺の副住職になったんです。それが昭和63年の4月のことです。

 

 

——— 僧侶になるための1年間はどのような勉強また修行をするのでしょう?

 

亀谷 僧侶になるためには、勉強というよりも決まった修行を行わなくてはなりません。四度加行(しどけぎょう)という真言宗の僧侶になるためには必ず行わなければならない修行を100日間行います。伝法灌頂(でんぽうかんじょう)という仏様と契りを結ぶ儀式が最終的にあって僧侶になるんですが、そのための準備として、精神と身体をしかるべき状態に高め、整えるために四度加行を行います。

専修学院では、三学期制になってましてね、4月に入って一学期目は、お経もろくに唱えられないのでお経の稽古とか、お大師様についての勉強とか、つまり基礎的な勉強があります。そして二学期になると、最初はまず仏様にお願いしますということで百八回、五体投地(両手、両膝、額を地面につけて行う拝礼)みたいな修行からはじまります。それをずっとやるんで、痛いんですよ、膝が。それから、やっと加行に入らせていただくんですよ。自分用の小さな机と、必要最低限の道具をお借りして、朝早くから修行します。三学期はお寺に入ってから行う具体的な作法や実践的な作法などを勉強します。

 

 

——— 修行中はどんな食事なんでしょうか?やはり精進料理ですか?

 

亀谷 はい、もちろん全部、精進料理です。

 

——— ということは、一切お肉とかお魚は?

 

亀谷 ありません。一汁一菜、ご飯となにかもう一つです。どなたかが仏様にお供えされたものを、次の日にいただくんです。大根や人参、きゅうりやさつまいもなど。ただし、ニラやネギ、玉ねぎ、にんにくなどの匂いの強いものはダメです。

 

——— 一般的に精がつくと言われているものですね。

 

亀谷 そうですね。若いんで体力もあるから、わざわざ精をつけちゃいかんというてね。お経にも説かれているんですが、魔が入るとか、良からぬことを考えるとかって。

だから、休憩の時間もないんですよ。何か修行が終わったら、一息ついてとか思うでしょ?間髪無く次の修行に移るわけです。仏器の掃除とか、写経とか。今から奥の院まで行きますとか。結構、過密スケジュールでしたね。

朝は4時くらいには起きて、21時消灯でしたけど、消灯時間までなんだかんだとありましたね。魔が入る隙が無いくらい。

 

 

——— 中でも一番きつかった修行は?

 

亀谷 一番、きついのはね…。なんだったかな?もう一回行けと言われたらイヤですけど、辛い、きついという感じじゃないんですよね。下界とは遮断されているし、いわば一日拘束されているでしょ、出られない。でも仲間は一緒におりますし。目の前の修行のことだけ考えていればよかったので。むしろ、普通の生活のほうが、仕事のこととかお金のこととか、色々と悩まされることがあるでしょ。そういうのは無いですからね。

それに、後で考えたら、教えてくれる先生方のほうが辛いんじゃないかと思いますね。私たちより早起きしなければならないし、厳しくしないといけないし、生徒から疎まれることもあるだろうし。一番、辛いんじゃないでしょうか。

 

 

——— 長時間の正座とかはきつくないですか?

 

亀谷 (笑) 慣れですね。専修学院での修行のときは、最初はもちろんみなさんと同じようにしびれたり、長時間正座していると足の感覚が無くなってしまったりとありましたけど、今は慣れですね。しびれることもありますが、みなさんと違うのは回復が早いんですね。こうちょっとお尻を上げて移動させたら、それで治ったりね。

 

——— 私たちは慣れないうえに、現代は椅子の生活なので、たまに正座するとものすごく痛いんですが。

 

亀谷 痛いですよね。でも、私が思うに一番体にいい座り方だと思うんです。と言いますのも、「正」しい「座」りで「正座」でしょ?例えば、法事などで足を崩して座っていたとしてもお焼香が回ってきたら、正座しなおすでしょう?襟を正すように、正座しなおす。自分の中でも、これはちゃんとした座り方なんだって、たぶん日本人はみんな思ってるんじゃないでしょうか。背筋も伸び、姿勢が正せますし、気持ちもどこかまっすぐに整うというか、体にも心にもいい座り方だと思います。

膝に悪いとか、O脚になるとか正座が良い悪いの諸説はありますけど、頻度や時間の問題じゃないかな。

正座をすると、太ももや足首のストレッチにもなるので、体にはいいんじゃないでしょうか?筋肉や関節が硬くなってしまうよりは、ある程度の可動域の柔軟性がないといけないことは一般的にも言われているので。

くれぐれも痛くならない程度に。

 

——— 入り口でヨガ教室のチラシも拝見したのですが。

 

亀谷 ヨガの先生が、隨心院でやらせてくださいということで開いています。激しいヨガではなく健康維持のためのヨガで、年配の方が多いですね。ヨガも心を鎮めたりする呼吸法ですから、私たちの数息観とか阿字観、いわゆる仏式の瞑想、これは難しいですけど、通ずるところもありますし。

 

 

——— それでは話題は変わりまして、現在寺務長をされている隨心院さんについてお教え下さい。見どころというのは?

 

亀谷 見どころは、やはり秋の紅葉と、春の梅ですね。有名な寺院に比べて、拝観の方が少ないのでゆったりと見られる点はいいんじゃないですかね?

最近は海外からの観光客の方も増えましたね。

 

——— 小野小町ゆかりのお寺とお伺いしましたが?

 

亀谷 隨心院がある小野は、小野一族が栄えたところで、小野小町もこの地の出で宮中を退いて後も過ごしたと言われています。境内には、小町作と伝えらる文張地蔵や化粧井戸、文塚などがあります。

 

——— やはり美しさを求める女性の参拝客が多いですか?

 

亀谷 多いですね、断然多いです、女性の方が。「美心守(びじんまもり)」が人気で、それを求めて遠方から来られたり。ただね、私たちのいう美しさとは、外見でなく内面の美しさですので、お守りも「美」しい「心」のお守りとしています。小町さんも、絶世の美女、美人とされていますが、平安時代のはるか昔の方なんでお顔も分からないでしょ?少なくとも今残っているのは古今和歌集の歌ですよね、百人一首とかの。なので、その歌を詠む教養がおありだったんで、それで美しい心をお持ちだったんじゃないかと考えています。

 

隨心院では、写経や写仏をしていただくことができるのですが、それも女性の方が人気ですね。とくに写仏、仏様のお姿を書き写すんですが、写仏をやっていると心がとても落ち着くといって、リピーターの方も多いですね、若い女性の方でね。仏様の種類も13、4種類ありますから。

 

——— そんなにあるんですね。

 

亀谷 簡単なものから難しいものまで。シンプルなものからすごい細かったり。なので、一時間から、長いと三時間くらいかけて描かれる方もいらっしゃいます。それだけ集中するのはなかなか大変ですよ、でも達成感があるんですよ。写経は文字で、写仏は絵ですから初めての方も多く、特に女性は丁寧にきっちり描かれるので、すごい上手にお描きになられます。その分だけ、達成感もあるんだと思います。

普段の生活では色々と悩まされることもありますから、たまには心を落ち着けて、整えるというのは、日頃の心身の健康には良いんじゃないでしょうか?

 

 

次回、後編に続きます。

 

真言宗 大本山 隨心院 http://www.zuishinin.or.jp

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